英国王室に詳しく、皇室に関する著書もある関東学院大学の君塚直隆教授によると、
「'97年にダイアナ元妃が亡くなったとき、イギリスの特に若い世代が“税金で食っているのにチャリティーをやっているのはダイアナだけだ”と王室を批判したのです。実際には、王室は300年近く前からチャリティー活動を行っていたのですが“ひそかにやるものだ”というのが当時のイギリス王室の風潮でした。その反省から広報に力を入れるようになり、SNSを活用した結果、今日のイギリス王室、特にエリザベス女王の絶大な人気につながったのです」
コメント欄の扱いも懸念点
'20年、エリザベス女王の公式ツイッターアカウントが突然、何の前触れもなく《Thanks》とだけ投稿。即座に削除されたが、それに対する批判はなく「エリザベス女王が投稿ミスをした(笑)」とむしろ好意的に受け取られたことがあった。
ただ、日本の皇室が同じことをできるとは限らない。
「イギリスでは18人の王族で3000以上の団体の支援をしており、毎日SNSに活動をアップしてもネタはつきません。日本の場合は15人で90団体だけ。天皇皇后両陛下や高円宮久子さまは精力的ですが、それ以外の方々は公務が空いている日が目立ちます。SNSで現状の活動をアップしたとしても、“何もされていないのでは”と思われれば逆効果になってしまいます」(君塚教授)
SNSで起こる炎上の心配については、ITジャーナリストの三上洋さんは、このように指摘する。
「炎上を起こさないためには、投稿前のチェックを複数人で行うことが必要です。内容はもちろん、 現在の皇室の状況なども含めて、事前のチェックは欠かせません」
そのためには、手間とコストがかかる。
「運用自体は一般職員でも大丈夫ですが、SNSの特性、パスワードの扱いやセキュリティーに関するリテラシーは持っていなければいけません。加えて、詳しい専門家の定期的なチェックも必要です」(三上さん、以下同)
SNSでは“コメント欄”の扱いも懸念点だ。
「基本的なSNSの運用自体には問題がなくても、誰でも書き込めてしまうコメント欄が、何かの商品などの宣伝に利用されてしまうおそれがあります。そういったことを防ぐ“コメントコントロール”が必要になるでしょう」