父との断絶にさかなクンは
数日後、さかなクンの自宅へ向かうと、フィッシュハウスからさかなクンが現れた。
─映画、面白かったです。
「あ、どうも」
例の帽子はかぶっていないが、話し方はいつもの調子。早朝から船で漁に出て、とれた魚を調理していたようだ。
─お父さんが住んでいる場所は知っていますか?
「ああ、えっとー」
父について質問すると、口ごもる。
─お父さんは一度もここに来たことがない?
「ウチにはたぶん、来てないんじゃないかな」
─それは、お父さんの暴力があったから?
「ぼうりょく? えっと、それ誰が言ってたんですか?」
連絡をとっていないことは認めたが、父を悪く言いたくない気持ちが伝わってくる。
─お父さんとの関係は“断絶”している?
「断絶っていうか、なかなか会う機会が……」
父が映画を見たいと言っていたと話すと、心持ち口角が上がったように見えた。