大谷翔平選手に嫉妬する人がいない理由

(2)嫉妬は「同じ」ことから生まれる

 ジョージア大学のエイブラハム・テッサーは、自己評価維持モデルという理論を提唱したことで知られています。私たちの自己評価というものは、他者との比較で変わってきます。たとえば、クラスメイトと同じ大学を受験し、自分だけ落ちてしまったら、「私ってダメだな」と落ち込んで自己評価は下がってしまうでしょう。それでは、あるクラスメイトが大学を受験せず、役者を目指し、何年か後に大ブレイクしたとしたらどうでしょうか。人気者となったかつての同級生を見て、あなたは嫉妬したり、自己評価を下げることはなく、「すごいな、がんばったな」とむしろ相手を高く評価することでしょう。場合によっては、「今人気の俳優は、同級生だったんだ」と人に言って、自分の“箔付け”に使う人もいるかもしれません。

 結局、「成功した人に嫉妬する」のではなく、自分と「同じ」かどうかがポイントになるわけです。ということは、嫉妬は同じ環境(学校や会社)、同性、同じ年、同じ職業などで生じやすくなるということ。今回の件も、夫同士が同じチームだからこそ、年俸などの格差を必要以上に気にしてしまったのかもしれませんし、誹謗中傷をしたとされる山田選手の妻は元タレントだったそうです。妻同士が「同じ職業」だったことも、悪い嫉妬心に拍車をかけたのかもしれません。

(3)嫉妬は「自分より下だ」とみなしている人に抱く感情である

 メジャーリーグで大活躍する大谷翔平選手に対して、「嫉妬する」という人はほとんどいないでしょう。これを上述した(2)の理論を使って解釈するなら、多くの人は野球選手ではないために、彼の業績を素直にほめたたえられると見ることができますが、もう一つ見逃せないのが、嫉妬というのは、自分より下だと思っている人にいいことがあったときに起きる感情だということです。

 たとえば、婚活中の女性から、友達の結婚が喜べない、友人の幸せに嫉妬してしまうという話を聞くことがあります。自分が恋人と別れたタイミングで、友達の結婚を聞かされたりすることもよくある話ですから、その気持ちはわからないでもありません。しかし、上述したとおり、嫉妬は「自分より下だと思っている人」に対して持つ感情ですから、実は「私は友達を下に見ていますよ」と言っているのと一緒なのです。

 恋人はいない、結婚願望もないと言っていた友達が突然結婚することになったと言ってきたら、嘘をつかれていたショックなども相まって、嫉妬心を持つかもしれない。しかし、そうではなく、交際相手の存在も知っていたなら、カップルがなんらかのきっかけで結婚することは、不思議でも何でもありません。それでも消えないモヤモヤがあるなら、友人を下に見て、「自分より先に結婚するなんてありえない」と思っていなかったか、振り返る必要がありそうです。

 人を下に見る人と言えば、みなさんの周りに「〇〇でいいな」が口癖の人はいませんか? こういう人は嫉妬深い可能性があります。「あの子は顔がかわいくていいな」「実家がお金持ちでいいな」という発言をする人は「人をうらやましがる人」とみなされるでしょうが、私に言わせると嫉妬深い人です。なぜなら、「あの子は顔がかわいい」「実家がお金持ち」いう言葉には「自分がイマイチなのは、自分のせいではない、自分が悪いわけではない」という自己正当化が隠されているように思うからです。「あの子は運がいいだけ。実力だけで比べるなら、私のほうが上なのに」と相手を下に見ているからこそ、愚痴りたくなるのだと思われます。

 反対に会話の中でブランドアピールが多い人も、嫉妬深いと思います。「能ある鷹は爪隠す」ということわざがあるとおり、本当に認められている人、自分に自信がある人は「私はあなたより上」だとひけらかす必要はありません。ニセモノの自信で自分をアピールする人は、「人を下に見たい人」であり、嫉妬深いと言えるのではないでしょうか。