ところが、プライスショップの台頭で日本のメガネ業界全体が安売り競争に巻き込まれてしまった。それに伴いスタッフの人件費があまり上げられなくなり、技術のある人が業界から数多く去ってしまった……と伊藤さんは嘆く。
「50代くらいの技術のあるベテランが残っているのは、高級チェーン店を中心としたごく一部だけです」
業界から腕のあるベテランが減ってしまった結果、機械任せにして合わないメガネをかけてしまっている人も増えてきているそう。
「多くの眼科医も指摘していることですが、合わないメガネをかけていることが、頭痛、肩こり、眼精疲労といった不定愁訴につながることも。日々の快適さや労働生産性にも影響しているわけです」
どう選ぶのが賢いの?メガネ店の使い分け術
メガネ店を選ぶ以前に、忘れてはならないことがある。医師による診察だ。“前より見えづらくなった”と感じたときなど、目に関する不調は眼科に、頭痛などの不定愁訴を感じている場合は内科に。メガネでは治せない病気の可能性もあるからだ。
これといった病気がなく、近視や老眼ということになればメガネ店へ。では、プライスショップや高級チェーン店など、店をどう使い分ければいいのか。
「度数が強くなく、左右の視力に差がなく、乱視などもない人。それから、これまでも安いメガネで不定愁訴を感じることがなかった人は、プライスショップのメガネでもトラブルなく過ごせる可能性が高いですね。今まで100円ショップやホームセンターで買った老眼鏡でしのいでいた人も、まずはプライスショップのメガネを試してみてください。視力に合ったメガネを作れてはるかに快適に過ごせます」
メガネを使う時間が短い人も、高いメガネをあつらえるのは抵抗があるだろう。
「1日中、コンタクトレンズで過ごしていて、夜の数時間だけメガネで過ごす人は、プライスショップのメガネから試すのもいいですね」
伊藤さんの会社では、全国の眼科医1009人を対象にアンケートを実施。「眼鏡を選ぶ際、押さえておくと良いポイントはどれですか?(複数回答可)」という質問に対しては、『目と目的に合わせたレンズを選ぶ(52・4%)』との回答が最も多く、次いで『(フレームを)瞳孔間距離だけでなく、顔幅サイズや骨格で選ぶ(49・8%)』『フレームのフィット感で選ぶ(35%)』といった答えが多かった。
これらを実現するには、高い技術を持つスタッフのいる店を探したいところ。ただ、すでに述べたとおり、業界全体が腕のあるベテラン不足になっているという問題もあり、自分に合ったものがなかなか見つからず、メガネ難民になってしまっている人も多いのでは。