「ポイントは、音楽配信サービスとユーチューブでしょうね。以前と違って、CDなどの商品を買わなくても世界中の音楽が気軽に聴けますから。そんな環境があったから、世界中の音楽好きがシティポップという特殊な音楽を発掘して面白がったんですよ」
創始者・山下達郎が令和にリバイバル
そんなシティポップの源流といわれるのが、山下達郎がメンバーだった伝説のインディーズ・バンド『シュガー・ベイブ』('73〜'76年)。EPOがカバーしてヒットした『DOWN TOWN』('83年)は、もともとシュガー・ベイブが'75年に発表した楽曲である。
「これぞシティポップ、といえるのは、何といっても山下達郎の『SPARKLE』のこのイントロでしょうね」
と、スージーさんがギターを持ち出し、コードを鳴らし実演しながらこう話す。
山下達郎のアルバム『FOR YOU』に収録された、シャキシャキと乾いたギターのカッティング音から始まるこの曲は、なるほどシティポップの特徴をよく表している。
今年6月、山下達郎が11年ぶりにニューアルバム『SOFTLY』をリリース。何とCD、アナログレコード、カセットテープという異色の3タイプでの発売である。
新作のパブリシティーもあって、山下はラジオ番組に多数出演。また若者にも人気の音楽番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)でもロングインタビュー(山下は音声のみの出演)が放送された。それをきっかけに過去の楽曲が注目を集め、同時に山下達郎が「先駆者」とされるシティポップ自体も、さらにスポットライトを浴びることとなった。
山下達郎の妻である竹内まりやの『PLASTIC LOVE』('85年)もユーチューブで5000万回以上再生されている。また、今年ビルボード2位となったカナダの人気バンド『ザ・ウィークエンド』のアルバムの1曲に亜蘭知子の『Midnight Pretender』('83年)がサンプリングされ、ネットや音楽好きの若者の間で話題になっている。
それにしても、日本の音楽にはJ-POPをはじめさまざまなジャンルがあるし、歴史も長い。なぜシティポップだけが世界に広がりを見せたのか。