汚れたテーブルの上で食べるからうまい料理

 1本目のコントでは、ボケの原田くんがセーラー服にブリーフ姿の大学生として登場しますが、これを出オチとして消化してしまうとあのコントの本当のおもしろさにはたどり着けないと思います。コントが進むにつれて、あの男が別にふざけているわけでもなく、彼なりに社会に適合しようとしている姿が見えてきます。言うことはいちいちおもしろおかしいのですが、当の本人は何にもおもしろいことをしようとしていないその姿が神々しくすら見えてくる、そうなるとあなたはもうあのコントの虜です。

 そして、2本目のコントは、仲の良さそうな女性2人の一方が「紹介したい男性がいる」と言って、目の前でその男性になっていくというものでした。この展開には度肝を抜かれました。コント史に残る展開だったと思います。映画でも、演劇でもなくコントだからこそ成立する素晴らしい発明でした。

 忘れてはならないのは、両方のコントでのきんくんのツッコミにならないツッコミ、被害者の声とでもいうべき「切なる訴え」が世界観を引き立てていたことです。あれが普通のツッコミだと、コントももっと普通になってしまっていたはずです。

 終わってみれば、僕も彼らの料理は汚れたテーブルの上で食べるからうまいんだと、気づかされていました。テーブルの汚れすら風格としてお茶の間に受け入れられるのも近い未来だと今度は自信を持って予測します。

岩崎う大 1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多才に活躍中