ストレスが重なって緊急入院
「私だって、自分の幸せを夢見ました。結婚を考え、男性と交際するたびに、母親のことを打ち明けようと思うのですが、どう伝えたらいいかわかりませんでした。父のことも話せず、関係が深くならないうちに相手との別れがやってくる。この繰り返しでした」
そして入院から10年後に父親が亡くなると、母親の毒親ぶりがさらにひどくなる。
「母親は“長女なら父親の葬式代を払うのは当たり前だ”と、ヒステリーを起こして私に絡んできました。絶句している私に“払えないなら戸籍から除籍する。実家に帰ってくるなら30万円くらい持ってこい!”と怒鳴ってきました」
逃げるように東京に戻った絵里香さん。父の葬儀でわかったのは、母の外面のよさと、娘たちに対する真逆な態度だった。そして、絵里香さんを悩ます問題がまたひとつ増えた。
「妹は父が入院中に実家に戻っていました。務め先が倒産し、次の仕事先でいじめに遭って、妹はそれ以降ひきこもりになってしまったんです」
父親の死後、妹は人が変わったように母と一緒になって罵詈雑言を絵里香さんに浴びせるように。絵里香さんは母親だけでなく妹とも距離を置こうと決めたのだが─。
「ピアノバーのオーナーが急死してしまい、閉店に。失職してしまったので、次を探している最中も、母親から罵詈雑言の電話が鳴りやまなくなって……。とうとうストレス性の突発性難聴を患って緊急入院しました」
突発性難聴は演奏家にとって致命的な病気だった。失意のどん底にいた絵里香さんを、母も妹も助けてくれなかった。
「お見舞いに来てくれた友人やファンの励ましのおかげで、1年後には奇跡的に治りました。ところが貯金が底をつき、生活保護を受給することに。でも受給担当者が複数回、経済的援助が可能なのか、と母に手紙を出してくれたのですがスルーされていました」