宮沢りえはリメイクで登場
永谷園のようなかつての名作CMをそのまま流すというスタイルは珍しいかもしれないが(そのためかつての画面サイズの4:3の比率のままである)、その昔、人気を集めたCMのDNAを継ぐ最新CMは少なからず存在する。前出のテレビ関係者は言う。
「英会話スクールNOVAの、『♪いっぱい聞けて、いっぱいしゃべれ~る』の歌で人気を博したNOVAうさぎが、久しぶりにCMに帰ってきています。湖池屋『スコーン』も、『♪スコーン、スコーン、おいしいスコーン』という耳に残るフレーズとキレキレのダンスが印象的なCMが、Sexy Zoneの中島健人さんによってアップデートされ、現代によみがえりました」
ほかにも変則パターンでの復活系CMはある。昨年話題になったのは、TOKIOの城島茂、国分太一、松岡昌宏が出演するネスレ日本の『ネスカフェ ゴールドブレンド』だ。1970年の「違いのわかる男」キャンペーンを思い起こす、あの「ダバダ〜♪」の音楽を10年ぶりに復活させている。
さらに、誰もが懐かしいと思ったのは宮沢りえの『三井のリハウス』ではないだろうか。
「宮沢りえが娘を連れて、『ママもあなたくらいのときにはじめてリハウスしたの』と語りかけ、懐かしいCMの一場面が挿入されるというつくりです。背景は全く違いますが、コロナ禍で不要不急の外出を控えるため放送されていなかったJR東海の『そうだ、京都行こう』も復活しました。一時期控えられていたパチンコ機のCMも気づけば復活しています」
そんななかでの永谷園の“そのまんまCM”は斬新だ。時代に合わせてリメイクするのではなく、当時のをそのまま流すのは大胆な戦略といえる。あるマーケティング関係者が語る。
「それだけの自信もあったのではないでしょうか。今のタレントさんや俳優さんで『マルコメ坊や』や『リハウスガール』のように受け継ぐ形での復活でも全然よかった気もしますが、それだと“2代目”という話題のみで終わってしまい、インパクトは得られなかったかもしれませんね」
製作費ゼロというある種のメリットもあるこの手法。過去の人気CMがそのまま復活する可能性について「お色気や暴力など、今の基準で流しづらいもの、肖像権の許可が取りにくいもの」(同前)を除けば、十分にあり得るかもしれないという。
あなたがもう一度見てみたいCMは、なんですか?
〈取材・文/渋谷恭太郎〉