親の援助は更生を妨げる

 前科者や刑務所を出た人々の社会復帰を支援する組織は、十分とはいえないまでも全国に多数存在しており、加害者本人が求めれば、助けてくれる人々はいる。しかし、淳子や直子のように、親に経済力のある加害者たちが社会的支援につながることはない。本気で更生を支援する人々であれば、加害者の我儘を受け入れることなどないからである。それに比べて親は甘く、手厚い援助をしてくれる。厳しい環境に行くより、温室にいた方がいいに決まっているのだ。

 そのような親子関係下で、再犯は繰り返されている。ターニングポイントがあるとすれば、親の資金が底をついた時である。淳子も直子も20年以上、息子のために資金をつぎ込んできたが、経済的な限界を迎えてしまった。息子たちは、自分の力で生きていく他、選択肢がなく、社会的支援につながり、ようやく更生の兆しが見え始めている。

 家族の縁を切るのは難しい。しかし、親子関係にお金が介在しているとするならば、金の切れ目が縁の切れ目になるはずである。

阿部恭子(あべ・きょうこ)
 NPO法人World Open Heart理事長。日本で初めて、犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。著書『家族という呪い―加害者と暮らし続けるということ』(幻冬舎新書、2019)、『息子が人を殺しました―加害者家族の真実』(幻冬舎新書、2017)、『家族間殺人』(幻冬舎新書、2021)など。