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日本アカデミー賞をはじめ映画賞の新人賞を総なめにしたデビュー作『MOTHER マザー』では、自由奔放な母親に振り回されたあげく凶行に及ぶ息子という難役を演じた。
「芝居は大変」その中で芽生えた俳優としての意識
「オーディションを受けて合格するとは思っていなかった」と当時の心境を振り返った奥平大兼(19)。
「大森立嗣監督が(撮影前に)“芝居は楽しいものだよ”とおっしゃっていたけど、その意味がまったくわからなくて大変という印象しかなかった。でもクランクインしてキャストやスタッフいろんな方と接しているうちに途中から楽しいと思えてきて、俳優の仕事を意識しました」
そのきっかけになったのが泣くシーンだった。
「撮影前のテストでは泣くことができなかったのに本番で(母親役の)長澤まさみさんの芝居を見て本気で泣けました。人の心を動かせるのはすごい。もう一度こういう体験がしたいと思ったことが大きかったです」
当時15歳。興味はなかったがスカウトされて芸能界に。デビュー映画での演技は鮮烈な印象を残した。
「僕のことを知ってもらえた大事な作品です。ほかの作品への出演にもつながり、出会いもあってよかったと思う反面、どこか重荷にもなっていました。『MOTHER』のときのような芝居が見たいといわれても今は絶対にできないと思います」
自身の成長とともに俳優に取り組む姿勢が変化した。
「デビュー作は何もわからずに自由に演じていたからできたと思います。でも今は演じていても簡単に満足できなくてストイックになるときがあります。
電車に乗っていても人間観察をしたり、日常生活すべてが役作りの参考になる。役者はこういう意識を私生活でも持ちながら過ごしているのかということに以前は気づけませんでした」