修繕積立金が倍増するカラクリとは
人間と同じように、住まいも年を重ねれば老朽化が避けられない。国土交通省が5年おきに実施している『マンション総合調査』の最新統計(18年度)によると、タワーマンションの平均修繕積立金は月額1万2305円。団地を除くマンション全体の平均修繕積立金である月額1万1060円に比べ、1割ほど高い。
1割ならたいしたことはない、と思うかもしれない。しかし実際には、修繕積立金が不足しているタワマンが後を絶たない。東京都新宿区が'19年に行った『タワーマンション実態調査』では、積立金が足りないと回答したタワマンは全体の48%に達した。
前出・間宮さんが言う。
「タワマンを販売する際、顧客に割高と思わせないように、不動産業者は修繕積立金を低く見積もって提案するのが通常です。ところが実際には積立金が数年後に不足しているマンションは多く、新宿区だけに限った話ではありません。月額の負担が増えたり、数十万円単位で一時金の徴収をされたりしたケースもあります」
間宮さんによれば、タワマンは15年ほどで大規模修繕が必要になるという。
「超高層になるほど工事費がかさみます。足場ひとつをとっても高層階まで組むことが難しく、屋上からゴンドラをつるすなど特殊な足場を組まなければなりません。プール併設のタワマンなら、防水処理などの専門的な工事も必要になる。こうして工事費用がかさみ、最初の大規模修繕で積立金を使い果たしてしまうタワマンも珍しくないのです。積立金が当初の倍以上に上がったり、年々高額になったりするケースも頻発しています」(間宮さん、以下同)
新宿区の調査では、総戸数が少ないタワマンほど修繕積立金の単価が高かった。
「これは空き家が増えるほど固定費が増大していくということ。その負担に耐えられずタワマンを手放すことになると、ますます積立金が不足し必要な修繕が行えない事態になりかねない。資産価値はさらに下がってしまいます」
問題が発覚したからといって、一般人が芸能人のように引っ越しするのは難しい。購入前の検討を徹底することが一番の備えになりそうだ。