「別居や離婚に際しては、こうした知識をもったうえで相手側と交渉しましょう。弁護士を立てて交渉する方法もありますし、その費用がない場合は家庭裁判所での調停に持ち込む方法も。調停では、第三者がそれぞれの言い分を聞いたうえで中立的な立場でアドバイスをしてくれますよ」
夫の年収が低ければ経済的困窮が待つ
ただ、いくら財産分与や年金分割を受ける権利があっても、それはベースとなる夫の収入や資産があればこそ。
「離婚後も生活レベルを維持するには、借金である家のローンがなく、さらに夫の年収が1000万円程度ないと難しいでしょう。財産分与を求めても、貯金がないことにはすぐにはもらえません」
給与所得者の平均年収は436万円。働き盛りの50代であったとしても年収が600万円を超える層はわずかだ。
「平均所得からみると、9割の人は生活レベルを落とさざるをえないと考えられます。その後の長い人生を考えると、経済力も重要ですから、相談に来た方にも、まずはその認識を持っていただくようにしています」
夫の収入や資産が少ない、自分に稼ぐ手段がない、身を寄せる実家もない、ないない尽くしの場合は、「安アパートで困窮生活を送る」覚悟が必要になる。
「夫との生活がつらくてどうしたらいいのか迷ったら、まずは無料の法律相談や離婚カウンセリングを受けて、経済面も見通しながら冷静に考えるといいですね」
【熟年離婚を決めたら始めたい5つのこと】
〈1〉1人暮らしでかかる費用を計算しつつ、仕事を探す
〈2〉預貯金、住宅ローンの残高など資産の状況を把握し、無料法律相談や離婚カウンセリングへ
〈3〉暴力、不倫など、夫に非がある場合は証拠集めを
〈4〉実家に住まわせてもらえるか、保証人になってもらえるか、住まいを確保するため親族に相談
〈5〉夫婦の間に入ってくれる第三者を見つける。家庭裁判所の調停で夫婦関係を修復するための話し合いも可能