本音と建前の使い分けができず、思いのままを口にする。ある意味素直で、だから隠し事は難しい。

「衝動的で自分でも何をやらかすかわからない。コントロールが不能で、常に爆弾を抱えているようなもの(笑)」

 長年自身のADHDと付き合い、その対策に気づいたと語る。

「ADHDは生まれ持ったキャラクター」

「結局本心が大切なんだなと。心のどこかで相手を批判したりばかにしていたら、やっぱり表れてしまうと思う。僕がやらかしたなというときって、たいてい相手を邪険に扱っているんですよね。だからこそ本当の意味で謙虚になって、心をキレイにしないといけない。今、改めていろいろなことを整理してみようと思って、最近、情報の断捨離を始めました。SNSから離れ、ひとつひとつ丁寧に世界と接していく。そうすることで、自分自身をブラッシュアップできたらと……」

 来年は心機一転、家族とカリフォルニアへ移住を予定。かねて、計画していたが、コロナ禍で延期になっていた。

「ロサンゼルスから90分ほどの田舎町。ピースフルとしか言いようがない奇跡の土地で、誰も家に鍵をかけないし、みんな自由でADHDみたいな人ばかり(笑)。だから僕にとっては居心地が良くて、向こうに行くとストレスが一切なくなるんです」

 昨今はADHDという言葉も浸透し、世間から理解されるようになった。

「とはいえまだまだ生きづらい。苦しんでいる人はいっぱいいるはず。つらいよね、と声をかけたい」

 と話す彼は、ADHDの認知を促すべく専門医との対談本を刊行した。ADHDにとってこの世は息苦しく、それでも社会の一員として生きていく必要がある。ADHDはその自身の特性をどう捉え、どう向き合っていけばいいのだろう。

ADHDは生まれ持ったキャラクターだから、ほかと比べて落ち込んでも意味がないし、つらくなるだけ。いったん諦めてダメな部分もすべて受け入れ、それをどうするか考えたほうがいい。特性をフルに認めて、自分自身の中で、客観視する自分と主観の自分とで二人三脚をしてみる。その“ふたり”が力を合わせて、“ここは危険だ、こっちに行ったほうがよさそうだよ”と、手を取り合って進んでいけたらいいですよね」

 ADHDの自分を受け入れ、キャラクターを生かし生きていく。それはまた双雲自身の今後のテーマでもあると話す。

「僕はこれからアメリカに行くけれど、そこでどうなるかまったくわからない。誰ひとりとして武田双雲を知らない場所で、もう一度自分を客観視して、ゼロから自分のキャラクターと向き合ってみるつもり。そこでどんな自分が見えてくるのか、何が始まるのか、ちょっと楽しみにしているんです」

武田双雲が振り返る、幼少時代から現在までの思い出と、精神医学の専門医・岩波明氏と、武田双雲の対談を収めた著書 ※画像をクリックするとアマゾンの商品ページにジャンプします。
【写真】幼少期から現在まで、ADHDの経験を語る書道家・武田双雲

取材・文/小野寺悦子