あえて選手に厳しい言葉も
選手への愛情は深く、ときには涙を流すこともあった。
「広島の監督に就任した'12年の試合前日に選手の前で泣いたことがありました。リーグ戦が始まると試合に出場するメンバーを選ばないといけない。それが辛かったのが理由でした。それくらい優しい人。今回のワールドカップで代表選手26人を選ぶのは相当辛かったと思います。おそらく、発表の会見に行くまでに何度も泣いたのではないかなと思います」
ただ優しいだけではなく激情家の一面も。
「高校時代にはラフプレーでやられた味方選手を助けるために、相手選手と喧嘩をしてレッドカードをもらったことが何度かあったようです。当時から仲間思いの選手でした」(前出・スポーツ紙記者)
勝つために選手にきつく接したこともあった。
「'15年の浦和レッズとの試合のハーフタイムでした。0―1でリードを許し、腰の引けたようなプレーをしていた選手たちに対して“お前たちは何がしたいんだ”と言うと選手からは“優勝したい”と。その返答に“優勝したいのにこんなサッカーでいいのか!”と激怒。“なんしよん”(広島の方言で“何している”)や“ビビってるなら代えてやるよ”など厳しい言葉をぶつけていました。その結果、逆転勝利。熱い人だから、日本代表クラスの選手がついていくのだと思います」(中野さん)
昭和の匂いを感じさせる優しさと厳しさを持ち合わせた熱い男。日本中を熱狂させる戦いを期待したい。