(4)胃がん

 国立がん研究センターのデータによると、2022年のがん死亡数で胃がんは第3位。

「手術で胃を切除すると、さまざまな後遺症が残り、身体に負担がかかります」と押川先生。代表的なのが、胃の機能が失われたことで食べ物が一気に腸に流れ込み、動悸、めまい、震えなどが起きる「ダンピング症候群」だ。

 また、胃がんが腹部に散らばり転移すると、腸がおなかの中でくっついたりねじれたりして腸が詰まる腸閉塞も起きやすい。押川先生いわく、これがものすごく苦しいそうだ……。

 早期発見に不可欠なのは、バリウムを飲むエックス線や胃内視鏡などの定期検診。

「あまり進行していない状態で見つかれば、ESDという内視鏡手術で完治を目指せるし、胃も残せます。ぜひ定期的な検診を」(押川先生)

(5)舌がん

 舌がんの5年相対生存率は69.4%と比較的高い数字だが、甘く見てはいけないと秋津先生。

「手術での切除範囲が大きいと、完治してもスムーズに会話ができなくなったり、気管に飲食物が詰まる誤嚥を起こしやすくなるなどの支障が出てしまいます」

 もし舌の大部分を失い、機能の維持が難しい場合には、太ももや胸、腕などから皮膚や筋肉などを移植する再建手術も行える。しかしそれでも舌を動かすのには大きな負担がかかり、味なども感じにくくなるという。

 押川先生は、小さな違和感を見逃さない大切さを語る。

「舌がんなどの口腔がんは、初期は口内炎と見分けがつかないことも。『そのうち治る』と放っておくと大ごとです。少しでも気になったら、まずは耳鼻咽喉科や歯科医院で早めに相談してほしい」

 他にも舌の粘膜に斑点ができたり、硬いしこりやしびれ、出血などがあれば要注意だ。

舌がんを公表し大手術を終えた歌手・タレントの堀ちえみ。発端は舌の裏に発見した口内炎のような白いできもの。半年後、耐え難い痛みで大学病院に駆け込むと、「ステージ4」だと宣告された
舌がんを公表し大手術を終えた歌手・タレントの堀ちえみ。発端は舌の裏に発見した口内炎のような白いできもの。半年後、耐え難い痛みで大学病院に駆け込むと、「ステージ4」だと宣告された
【写真】がんの生存率が年々上昇!「5年相対生存率(全部位)」

(6)上顎洞がん

 これは鼻の奥にある副鼻腔という空洞のうち「上顎洞」という箇所にできるがん。顔の内側で進行し、長引く頭痛、歯茎や顎の腫れ、蓄膿症に似た鼻づまりや痰などの症状を引き起こす。時には骨を壊しながら進行し、眼球が圧迫されて突き出してくることも……。

「症例は多くないがんですが、摘出手術で顔の形が変わってしまったり、眼球を失うこともあります。のちの生活への影響が甚大です。副鼻腔炎、頭痛、歯痛といった不調をそのままにしないのが早期発見や予防のカギ。鏡で自分の顔を観察し、腫れや変形などの異常がないか確認するのも大切です」(秋津先生)