被害者の長葭さんを知る、内装会社関係者はこう話す。
「長葭さんは18歳のころに同級生の父親が経営する内装会社に入り、数年後には独立していました。とにかくまじめで、人から恨まれるタイプではありませんでした」
ただ、今回の事件について話が及ぶと、顔が曇る。
「長葭さんは“2次請け”か“3次請け”の仕事をしていたはず。いわば“下請けの下請け”です。当然のことながら、下に行けば行くほど報酬は少なくなる。1社挟むごとに、だいたい3000~5000円は“ピンハネ”されます。うちは主に“1次請け”で仕事をしていますが、1件あたり2万5000円から3万円で受注したら、下請けさんには2万円以上は払います。でも、それが2万円未満にされるのはザラですよ」
と説明し、今回の事件の背景について、こう推測する。
「長葭さんが請け負っていた仕事の場合、容疑者に入る金額は、おそらく日当にして1万6000円から1万8000円ぐらいだったはず。それを、さらに下げていたのでは。ただし、まったく払わないわけではなく、1万円とかに……。長葭さんにとって“実入り”の少ない仕事をすれば、経営が苦しくなります。“今月は、この金額で頼むよ”なんてことが続いて“おまえ、いいかげんにしろよ”となったのでは……」(同・内装会社関係者、以下同)
さらに、こうした業界の“闇”も明かす。
数百万円単位で未払いがあった人も
「内装業界では、未払いなんていうのも当たり前。数百万円単位で未払いがあった人もいます。工事現場に職人が乗り込んできて“いいかげんに金を払えよ!!”とケンカになっているのを見たこともあります」
一家の大黒柱として、収入減少は死活問題。そうとうな額の未払い金があったならば、容疑者たちも追い詰められていたのかもしれない。
しかし、“パパ”だったのは、容疑者たちだけではない。
埼玉県内にある長葭さんの自宅周辺ではこんな話が。
「お子さんは3人いて、下の2人はまだ高校生。長男はバイク好きだったお父さんの影響か中型バイクに乗っています。家族はすごく仲よしで、庭でよくバーベキューをしていました。羨むぐらい明るくてすてきな家庭だったのに……」(近隣住民の女性)
容疑者たちの身勝手な犯行で、ごく当たり前だった“日常”が奪われ、遺族は悲しみに暮れる。“パパ”が突然“殺人犯”となった容疑者らの家族も、苦しみを抱える。犯行前、悲しむ家族の顔が浮かばなかったのか─。