現在、政府も5兆円のインバウンド消費を目指し、観光産業の支援の姿勢を示しているが、今後はそれに向けた取り組みも課題となっている。

円安やインバウンド、生活や経済への影響は?

 インバウンド需要や輸出業界にとってはうれしいこの円安。いったいなぜ始まったのか、今後も続くのか、気になるところ。

「今起きている円安の最大の原因は、アメリカと日本の金利の差が大きく開いてしまったことにあります。アメリカでは、長期の定期預金などは金利が4%くらい。一方、日本はほぼゼロです。

 つまりアメリカでお金を運用したほうが圧倒的に有利なんです。そうなると、多くの投資家は円を売ってドルを買いますから、円安ドル高が進むわけです」

 ならば、日本も金利を上げたらいいのに……と、円安による生活コストのアップに悩む庶民は思ってしまうけど。

「そう簡単にはいきません。金利を上げると、借金を返済するときの金利も上がります。つまり、借金しづらくなるということ。企業も個人も借金をしづらくなると、設備投資や買い物といった経済活動が停滞します。

 それに何より、すでに国が国債発行などで1000兆円という大きな借金を背負っています。この状態でもし金利がアメリカ並みに4%になれば、利子の返済だけで年間40兆円になってしまいます」

 ちなみに私たちが必死で払っている消費税の税収は年間20兆円。なのに、その倍の利子の支払いをすることになると……。

「どう考えても無理な話ですよね。当面、日本の金利は上げられず、円安の流れは続きやすいということ」

 円安が進行・継続すれば、私たちの食費や光熱費の負担は重くなっていく一方で、インバウンドによる経済効果はより増していく可能性も。ただしもう1つ、円安の長期化で懸念されるデメリットがあると加谷さんは言う。

「心配なのが、日本で働いてくれる外国人労働者の方が減ってしまうことです。今、建設、飲食、農業、介護などの現場は、アジアから来た労働力なしには成り立たなくなっています。

 そんな中、円安が進めば日本で受け取る給料の金額は変わらなくても、彼らの国の通貨からみると、実質、目減りしてしまいますよね」