目次
Page 1
Page 2
Page 3
Page 4
「ほんまに、私には大義名分がないんです」
取材中、インタビュアーに向かって何度も繰り返されたこの言葉。今年でデビュー25周年を迎えたジャズシンガーの綾戸智恵(65)だが、成功への驕りはいっさい感じさせることはなかった。
ジャズシンガーになりたいとは思わなかった
そもそも彼女は、幼少期から歌の世界を目指していたわけでは決してないという。
「両親が音楽好きだったので、ジャズや三味線の浄瑠璃など、音楽がたくさんある家で育ちました。中でも私がいちばん好きだったのは浄瑠璃。義太夫節が好きでよう歌ってました。でも、ジャズシンガーになりたいとかステージに立ちたいと思ったことは、一度もありませんでしたね」
ピアノを始めたのは3歳から。音楽の道を意識したことはなかったが、自由な教育方針の家でのびのびと育った。
「自宅から遠い幼稚園に通ってたんですが、自分で行きたいと言ったんでしょうね。母は私のやることを勝手に決める人と違うんで。うちは特別なことは何もない中流階級やけど、“あれあかん、これあかん”がなかったおかげで、いろんなことができました」
17歳のときには高校を休学して、アルバイトで貯めたお金でアメリカへと渡った。
「映画が好きで、テレビの『日曜洋画劇場』とか『金曜ロードショー』を見ていましたし、大阪で万国博覧会があったりして、海外文化がおもしろい時代でもありましたよね。それで、“外国人カッコええな。脚長いし、金髪やし”と憧れて行ったけど、現実は、みんなトム・クルーズばっかりちゃうねんね。ブサイクもいるんやな、とか思ってね(笑)」