年間の治療費が200万近くに
西川 ホルモン注射は何を?
千種 ペンシルタイプのゴナールエフというものです。
西川 その時、保険は利きましたか?
千種 確か、月に2本まで利いていたと思います。ただ毎日打っていると、約1週間で2本はなくなってしまう量でした。
西川 かなり高い薬ですよね。
千種 年間で100万円は軽く超えていました。いちばん医療費を支払った年は、200万円くらい使いましたね。
西川 今年の4月から体外受精が保険治療になったり、保険適用の検査などが変わったのですが、逆に保険治療のスタンダードなことしかできなくなりました。薬の量も、決められた量しか適用にならなくて。
千種 それは困りますよね。早発閉経は、その患者に合わせた薬の量を、先生がかなりきめ細かに考えて処方してくださっていたから。量が決められてしまうと……。
西川 それに長い期間、打たなくてはいけませんしね。不妊治療が保険適用になったことで、逆に医療費の負担が増えてしまうパターンですね。
妊活をあと2年早く始められていたら
西川 不妊治療は、ずっと聖マリアンナ医科大学で続けていたのですか?
千種 いえ、その後、より都心に近い別の専門クリニックに転院しました。今、振り返ってみると、埼玉のクリニックがもっと早く紹介してくれれば、結果として違ったかもしれないという気持ちがあります。
西川 今、早発閉経に対していろいろな治療方法が出てきています。聖マリアンナ医科大学でも以前は、ホルモン補充療法で卵子を育てて、取り出す方法でした。でもここ何年かで、河村先生がいらしてからIVA※2という……。
※2 IVA(イン ビートロ アクチベーション)。体外に取り出した卵巣組織に操作を加え、卵巣内にある原始卵胞を体外で成長させ、自身の体内に戻す技術
千種 あ!それ、知っています。
西川 IVA、やられたんですね。
千種 やろうとして、卵巣を取りました。
西川 組織の中に原始卵胞が見つからなかった?
千種 そうなんです。この中になければ、ほかの場所にある可能性も極めて低いじゃないかと自分で思ったので、もうIVAはやらないという選択をしました。
西川 IVAまで考えられたということは、当時、結婚して子どもをつくる予定があったのですか?
千種 いえ、あの時は具体的にお付き合いしている相手も、結婚の予定もありませんでしたけど、卵子の質というものが年齢に伴って悪くなってしまうじゃないですか。
なおかつ私の場合は、人より卵子が少ないのだとしたら、早くから採卵して卵子の凍結だけでもしようと思ったんです。
西川 聡明な方だから、すべてをわかってアクションを起こされたんですね。それが最良の方法なんですけど、取り組む時期が結果的にズレてしまったのかな、ということはありますが。
千種 そうですね……。ほかの人よりは早いかもしれませんけど(笑)。
西川 絶対早いと思います(笑)。でも、早発閉経と診断されていますからね。26歳でアクションを起こすのは、間違いではないです。
千種 ただ、こうした妊活をあと2年早く始められていたら、という気持ちはあります。少なくとも24歳の時には卵胞があったから、採卵して凍結できたかも……。
西川 確かに可能性はありますね。ただ難しいのが、その時点で医師がどんな治療をするのか、患者本人が自身の現状をどう受け止めて、それをどれだけ理解しているかということによってくるということです。
千種 そうですね。24歳の時の私だったら、その時の自分の状態を理解できていなかったかもしれないです。