同じ産婦人科でも不妊治療はさまざま
西川 治療法も、今でこそいくつかの選択肢を提案することはできます。例えば千種さんのお話を聞いたドクターが、こういう治療法がありますよ、と伝えられることが僕たちドクターの立場からすれば、非常に大切だと思います。
千種 自分自身、いろいろ経験してきて、どこのクリニックで治療を受けるのかがすごく大切なことだな、とわかりました。24歳当時、私は婦人科ならどこでも同じで、シームレスに診療が受けられると思っていたんです。
西川 それは僕もすごく大切なことだと思います。婦人科でも、不妊治療を専門にやっているところと、お産を専門にやっているところでは、ドクターが持っている知識が違いますから。
千種 私は治療を受けてきたので、知識がついてどこの婦人科の先生にも“こんな症状なのでこういう治療を受けたい”と希望を伝えられます。でも、20代の人たちはそこまではできないから、先生任せになってしまいますよね。西川先生なら、10年くらい前の私に、どんなクリニックをすすめますか?
西川 お産をするクリニックではなく、ホルモン治療を専門としているようなところですね。あと、新しい知識を勉強している若いドクターがいるところ。若い人ほど新しい知識を持っているから。
自分自身の経験を語ることが啓発に
西川 僕は、千種さんのような方がご自身の経験談を話していることが、若い人たちへの啓発になって、ちゃんとした診療を受けるチャンスを与えていると思います。
千種 ありがとうございます。でも、ここまでできるようになったのは、'20年に結婚した旦那さんの存在があってこそだと思っています。
西川 IVAを諦めて、不妊治療をやめられてから結婚されたんですよね。
千種 はい。早発閉経の自分を受け入れてくれて“あなたと一緒にいたい”と言ってくれました。本当のことを言うと、多くの女性ができている妊娠ということができない自分を、私自身が受け入れられなかったんです。
そんな中で、違う軸から私のことを受け入れてくれた彼がいてくれたからこそ、こんなふうにお話しできているのだと思います。
西川 今、不妊治療されている夫婦は昔に比べて奥さんに寄り添って一緒に治療されている旦那さんが圧倒的に増えています。千種さんの旦那さんのように、みなさん、とても優しい方です(笑)。
千種 ありがとうございます(笑)。
西川 最後に、若い人にいちばん伝えたいことは何ですか?
千種 生理が来ない理由がストレスからだろう、と多くの人が思うかもしれません。でも、ちゃんと病院を選んで自分の症状をドクターに伝えて診療してもらえば、“まさか”の事態に対処できるケースもあると思います。後々、後悔をしないために“婦人科はどこでも同じ”とは考えないでほしい。
また、西川先生がお話しされた、自分たちも新しい知識を学び続けなくてはいけないという言葉を聞いてすごくうれしく思いました。ほかのドクターにもこの言葉が届いてほしいですね。
ちくさ・ゆりこ ●気象予報士、防災士。東京大学大学院在学中。'17年~テレビ朝日『スーパーJチャンネル(土日)』、'21年~TBS『THE TIME,』に気象キャスターとして出演。
にしかわ・よしのぶ ●西川婦人科内科クリニック院長。医学博士。医療法人西恵会理事、日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会会員、日本受精着床学会会員、大阪産婦人科医会代議員ほか。
〈取材・文・撮影/蒔田 稔〉