人気脚本家の古沢良太さんがブラッシュアップした戦乱を生き抜き江戸幕府を開いて天下人となった徳川家康の生涯をどう演じるのか。ドラマを楽しむための見どころを制作スタッフにキャッチアップ!
松潤は「現場で自然に“殿”と呼ばれている」
──大河ドラマで最も登場回数が多い徳川家康。家康を主人公にした『徳川家康』(1983年)、『葵徳川三代』(2000年)を含めてこれまでおよそ60作品中、24作品に登場している。今回で25作目となる家康を題材にした理由は?
「まず、脚本の古沢さんからのご提案がありました。最初は、家康か……と思いましたが(笑)、エッジの立ったドラマを描かれる古沢さんがなぜ徳川家康なのか逆に興味を持ちました。好きな戦国武将が家康という古沢さんのプレゼンがとにかく面白かったのでやることに決めました。
みんなが知っている家康の人生ですが、古沢脚本では毎回ピンチが訪れてどうなるのか。次を見たくなる展開になっています」(制作統括の磯智明チーフ・プロデューサー(以下、磯CP))
──松本潤を主役にキャスティングした決め手は?
「40歳前後の役者さんが演じるのがふさわしいと古沢さんや演出家と話し合うなかで、名前があがりました。古沢さんの描く家康は、他人の力も借りて世の中を治めていく。
華があり優しいところもあるけど頼りない。そんな殿を支えたいと家臣団に思わせることができる。そういう人物を体現してもらえると思ってオファーしました。松本さんは実直な方で、チーム力を大切にされ思いやりがある。
そのなかに「支えなくては」と思わせる繊細な部分もあり、われわれが考えるイメージにフィットしました。現場では家臣団のキャスト、スタッフが自然発生的に“殿”と呼び、松本さんが振り返る光景ができあがっています」(磯CP)
──映画『ALWAYS三丁目の夕日』シリーズや『コンフィデンスマンJP』シリーズ、ドラマ『リーガル・ハイ』など人気作品を手がけた古沢良太さんを大河ドラマの初脚本に起用した理由は?
「大河ドラマでは、今の時代を切り取るのが上手な脚本家に書いていただくことが多いです。古沢さんの感性が大河に新しい命を吹き込んでくれるのではないかと思ってお願いしました。
素晴らしい構成力や発想力をお持ちなので、どんな知識や情報をインプットするかが重要だと考えてシナリオハンティングのために岡崎、浜松、静岡、伊賀、京都、大阪、佐賀といった家康ゆかりの地を半年かけて訪れました」(磯CP)
王道と覇道で悩む物語にワクワクしてほしい
──タイトルやアニメーションのようなオープニング映像の狙いは?
「今川義元のように仁と徳によって天下を治める王道がいいのか、織田信長みたいに力で天下を治める覇道がいいのか。王道と覇道で悩む物語はどうだろう、毎回“どうする家康”というピンチが訪れるのはどうだろうかと古沢さんとよく話していました。
タイトル案は“王道をいけ”とか“覇道をいけ”もありましたが『麒麟がくる』『青天を衝け』と似ていて、“どうする家康”が古沢さんの描きたいドラマをシンプルに表現しているタイトルに思い決まりました。ワクワクしてもらえたらと思います」(磯CP)
「戦国はひとくくりにできないくらい幅広い。抽象的な世界観で広がり、豊かさ、華やかさを表現したいと思い、手描きのアニメーションがいいと考えました。柔らかい風合いだけど奥が深い物語の入り口になっていると思います」(演出統括の加藤拓さん)
──桶狭間の戦い、関ヶ原の戦いなど家康に大きな影響を与える出来事が多いなかでキーになるのは?
「築山殿事件(家康が正室の築山殿とその長男・信康を殺害)。いろんな描かれ方をしていますが、家康は築山(瀬名)の死後、豊臣秀吉に押しつけられた正室以外、すべて側室です。
築山は悪妻でうとましい存在という解釈もありますが今回、古沢さんが描く家康と築山の関係がいちばんしっくりくると思います。史実を踏まえつつ、なぜ事件が起きたのか、夫婦関係を含めて納得でき、なおかつドラマチックな物語になっているので注目していただきたいと思います」(磯CP)