ひとつでも世の中とのつながりを持ち続ける
孤独死の現場は亡くなった人の深い孤独にあふれている。
「孤独死の多くを占めるのは、自分で自分の身の回りの世話ができなくなるセルフネグレクト(自己放任)です。部屋に尿を詰めたペットボトルが散乱していたり、ゴミ屋敷だったり。
また、比較的女性に多いのですが、寂しさのあまり複数のペットを飼育し、ご遺体とともに餓死したペットが見つかることも。猫は共食いもしますから、複数飼いの場合、その現場は想像を絶します」
ある女性の家では、部屋の真ん中に大きなたんすが倒れたまま放置されていたという。
「東日本大震災で倒れ、ひとりではどうにもならなかったのではないかとの話でした。孤独を抱えたまま何年間この部屋でひとり暮らしていたのだろうかと思うと……」
孤独死の男女比は8:2で男性のほうが圧倒的に多い。
「孤独死する人は、単身や離婚後の男性が多い。女性も、離婚や恋愛などでダメージを受けて、セルフネグレクトへ陥ってしまうケースが後を絶ちません。孤独死の現場で社会から孤立したプロセスを知ると、胸がしめつけられます」
孤独死を防ぐために、できることはあるのだろうか。
「ひとり暮らしの場合は、年齢に関係なく、親族や近所の方、行政などに気にかけてもらえる存在でいることも大切だと思います。発見は死臭によることが多いのですが、郵便受けにハガキや新聞があふれていることがきっかけになることも。定期便など、なにかしら世の中とのつながりを持っているといい」
また、相談窓口を設けている自治体もあるので“あの家にゴミがたまっている”など、周囲の気になる家について相談をすることが可能だ。
「自治体によって対応の仕方はいろいろなのですが、例えば神奈川県横須賀市には『ほっとかん』という福祉の総合窓口があり、さまざまな不安や困り事を抱える方からの相談を一括して受け付けています。近年、内閣府に孤独・孤立対策担当室が発足したことで、孤独死を取り巻く状況が少しずつでも変わっていくことを願っています」