キリスト教の団体からクレームが来ても…
当初は、各コーナーの収録中に、NGが出るたびに懺悔をさせていたという。そのため武者はいつでも出られるように、スタジオに朝8時入り。そして撮影が終わる24時過ぎまで白塗りの状態で待っていたそう。だから、忙しい芸人には頼めなかったのだ。
「始まって3週目に、どこかのキリスト教の団体からクレームがきたそうです。最初のころは十字架にはりつけにされたポーズでやっていましたからね。
“このコーナーも終わりか”と思っていたら、プロデューサーが、“クレームがくるってことは面白いってことだよ。まだ続けるから”と。
どうするのかと思ったら、十字架を外し、はりつけで左右に平行に伸ばした腕の位置を、斜めの角度にするっていうんです。深く考えもせず(笑)。今ならありえないことですが、何をやっても怖くない、面白いことならなんでもやっちゃえ、というノリが、当時はあったんでしょうね」
◯か×の判定には一切、忖度ナシ!
やがてひょうきん懺悔室は、番組のラストを飾る名物コーナーになっていく。番組の“締め”ができたことで、骨組みがしっかりしてきたと同時に、視聴率はぐんぐん上がっていった。
『オレたちひょうきん族』は、それまでのテレビ番組では裏方に徹していた番組スタッフを表に出し、内輪ネタで盛り上がるのを、視聴者も楽しむという側面もあった。故・横澤彪プロデューサー(当時)が牧師役として出ていたのを記憶している人も多いだろう。
「○×の判定について、横澤さんが私に指示を出しているのではないかと思った方もいたようですが、すべて私の判断で忖度なくやっていました。もちろん、中には判断に迷うケースもありましたよ。一番迷ったのは、当時のフジテレビの編成局長(後の代表取締役会長)だった日枝さんのとき。懺悔の理由も、プロ野球中継が多すぎて『ひょうきん族』の放送がお休みになることが多いという、ビートたけしさんからの一方的な訴えでした。
そのときはさすがに私も躊躇して、小声で牧師の横澤さんに“×でいいですか”って聞いたんです。でも、横澤さんは何も答えない(笑)。これはOKってことだなと判断して、×を出しました」
芸人、スタッフ以外にも多くのタレントが懺悔していたが、印象深かったのは?
「天地真理さんが来たときは、個人的な理由で迷いました。僕、大ファンなんですよ。でも“空気”があるじゃないですか、水をかけると面白いって。なので、×にしたんですけど、“あの天地真理さんにかけちゃった!”ってちょっと気持ちよくて(笑)。
荻野目洋子さんのときは、あまりにかわいくて、絶対に水をかけるわけにはいかないって、じゃじゃじゃーんって判定の音楽が終わらないうちに◯を出しちゃった」