神様の布教活動「介護、認知症をオープンに語りたい」
ブッチー武者は2014年、劇団ZANGEを立ち上げ、認知症の高齢者介護を題材に舞台『生きる』を上演、全国を巡っている。昨年、記念すべき20回目公演を迎えた。
「仲良くしている友人の母親が認知症になったのを目の当たりにしたのがきっかけです。友人のことをわが子だと認識できなくなっていて、知的なお母さんだったのでとてもせつなくなってね。これを他人事にしてはいけないと、お笑いや俳優仲間に声をかけたらみんな共感してくれて、舞台をやることにしました」
舞台は2006年に起きた、京都伏見介護殺人事件を題材にしている。当時50代の息子が、認知症の母親の介護によって生活苦に陥り、母親の首を絞めて殺害した事件だ。初公判で被告である息子による“母の命を奪ったが、もう一度母の子に生まれたい”という供述が紹介され、裁判官や刑務官が涙をこらえるような様子が見え、地裁が泣いた悲しい事件として知られている。
「介護をひとりで抱え込まず、もっとオープンに語れる世の中にしたいという思いがあるんです。重たいテーマを扱っていますが、絶対に目をそらしてはいけないこと。これからも公演回数を重ねていきたいですね」
ぶっちー・むしゃ お笑いタレント、俳優、劇団ZANGE代表。テレビや舞台などで活躍するほか、新宿歌舞伎町で『女無BAR(メンバー)懺悔の部屋』を経営
<取材・文/樋口由夏>