親の生前整理は写真から始めるとスムーズ

 自分のベストアルバムを作ったら、次は親のアルバムも作ってほしいと大津さん。

「意外と知らなかった親の姿を見ることができるはずです。例えば、仕事や子育て中の写真を見て“こんなに頑張って生きてきたんだな” “ずっと自分をサポートしてくれたんだな”と。親の生き方を認められるようになり、介護が必要になったときも、自然とやさしくなれると思います」

 また、写真を通じて親の好みや大切にしているものを知ることができ、介護時のケアに活かせるのはもちろん、スムーズな生前整理にもつながると話す。

大津さんが作った自身のアルバム。「人生はまだ続いているので、大きなライフイベントがあると、後半の写真を入れ替えています」。最終ページには(遺影用の)エターナルフォトも収録
大津さんが作った自身のアルバム。「人生はまだ続いているので、大きなライフイベントがあると、後半の写真を入れ替えています」。最終ページには(遺影用の)エターナルフォトも収録
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「親の生前整理でもめるのは、信頼関係が薄れた状態で、子どもが親のものを片づけて処分しようとするから。

 逆に大切なものや好きなものを子どもが理解してくれているとわかれば、親は安心して片づけに協力してくれることが多い。アルバム作りは生前整理の第一歩として重要な役割を果たしてくれます」

 親のアルバムは、親が思い出を語れるくらい元気なうちに。時間がかかっても「お母さん、楽しそうだね。これは何の写真?」など、親の人生に興味を示し、いろいろな話をしながら一緒に作ることが肝心だ。

「親自身の話を深く聞いて寄り添うことは、自分や家族の人生を肯定する作業にもなります。できあがったアルバムは、世代を超えて家族で思い出を共有できる、かけがえのない存在になりますよ」

「マイ・ベストショットアルバム」の作り方

STEP1 写真を時代ごとに分ける

 生後から今までの写真をすべて集め、生まれたころ、小学校、中学校、高校、大学、社会人、結婚などのカテゴリー別に分ける。そこから大切だと思う写真を100枚ほど選ぶ。風景写真や知らない人・思い出せない人が写った写真は省くこと。

「いつの何の写真かわかるようメモした付箋(ふせん)を貼り、1枚ずつ写真袋に入れましょう。この100枚は思い出が詰まった大事な写真なので、缶などで保管してもOK」

STEP2 アルバムに使う30枚を選ぶ

 選んだ写真から、さらに思い入れのある30枚を厳選。「自分の好きな時代が多めになってもいいですが、生まれてから今までを写真で振り返れるよう、できるだけ幅広い時代から30枚を選びましょう」。写真を選んだら、時系列に並べ、1ページに1枚ずつアルバムに収めていく。

「アルバムは、気軽に取り出して眺めたり、同窓会などに持っていけるような小さめのサイズがおすすめ」

STEP3 写真にコメントを添える

 撮影当時に感じたことを思い出しながら、それぞれの写真にコメントを書く。

「“誕生日” “結婚式”といったタイトル的なものではなく、何の写真で、当時どんなことを思っていたかを書くのがポイント。例えば、姉妹との写真なら“○○にて。お姉ちゃんとおそろいの服がうれしかった”といった感じに。後の世代にご自身がどんな人だったかを紹介するような内容がベストです」

 教えてくれたのは……大津たまみさん ●30年以上のキャリアを持つ、清掃業界のカリスマ。メディアでも活動するほか、中国や台湾でも人気講師として活躍。『物と心をスッキリ身軽に! 生前整理で幸せな老いじたく』など著書多数。

〈取材・文/河端直子〉