「目鼻立ちがくっきりしていて、少し昭和の薫りが漂うビジュアルです。美形なのに、話すと岡山弁丸出しのほのぼのした口調。そのギャップがたまらないんでしょうね」(前出・スポーツ紙記者)
洗足学園音楽大学名誉教授で音楽評論家の中川ヨウ氏は、藤井は世界進出の可能性を秘めていると語る。
25歳とは思えない達観した死生観
「彼の音楽は、実に“グローカル”で、ジャパニーズポップスという枠を超えたポピュラー音楽といえるでしょう」
インターネットで音楽を聴くようになった今、世界では、配信という世界的な舞台を持てるグローバル化と、“自分がこれまで聴いてきた音楽”をアイデンティティーとして生かすローカル化を同時に実現した“グローカル”な音楽が求められているという。
「歌詞が英語かどうかは、それほど大きな問題ではなくなり、日本語の楽曲でも世界に通用するように。演奏家やシンガーのみでなくリスナー側も進化する中、藤井さんの音楽は十分に評価されています」(中川氏、以下同)
YouTubeを使った配信も効果的だった。
「彼の強みは、動画配信を通じて、リスナーひとりひとりとダイレクトにつながっているところ。リスナーは1対1の対話を楽しんでいるわけです。岡山の方言で語りかけ、自宅の床にキーボードを置いて演奏するスタイルは、生身の人間を感じることができ、友人のように親しげな感覚を視聴者に与えていると思います」
独学で作り上げた音楽が、唯一無二のオリジナルな世界観となっている。
「コード進行にジャズ的なニュアンスがあり、彼が聴いてきた音楽のアイデンティティーが生かされています。歌詞からは、25歳とは思えない達観した死生観が読み取れる。若いシンガーは恋愛の歌が多いのが普通ですが、藤井さんに恋の歌は少なく、成熟した女性にも響く死生観と音楽のクオリティーを持っています」
わかりやすい言葉で歌っている中に、深いメッセージが込められているのが、藤井の楽曲の特徴だ。