医者がムダ医療をリストアップ

 アメリカでは、医療者側がムダな医療を追放しようという動きが。

 アメリカの人口は日本の2・6倍にもかかわらず、医療費は8倍近い300兆円。そのため、膨大な医療費を削減するための制度改革が進みつつあるのだ。

「アメリカの医学会がムダな医療を公表する計画が2011年から始動しています。『チュージング・ワイズリー(賢く選ぼう)』と名づけられた動きで、現在は550項目もの行為を不必要と認定しています」

 これ以上、医療費が増大すると国家的な問題になる─必要な医療だけを施そう。そういった考えがアメリカの医学界で進んでいるのだ。

 そこで、アメリカの「チュージング・ワイズリー」で取り上げられた内容から、日本にも活かせる項目を一部抜き出して室井さんに解説していただいた(次ページ参照)。あなたの身近にあるムダな医療をぜひ確認してほしい。

日本は入院費にも要注意!

 室井さんは「日本ではムダな『入院』が増えている」と言う。

「先ほどご紹介したように、アメリカは病気ごとに支払う料金がだいたい決まっているのに対し、日本は患者の入院期間が延びると、その分、医療機関が請求できる金額が増える仕組みです。入院日数が延びるほど儲かるので、これもムダ医療の温床です。例えば、日帰りでもできる白内障の手術でわざわざ入院させたり、積極的な医療をしないにもかかわらず、糖尿病の人の生活を改善させる『教育入院』を1か月させたりといったケースも多いのです」

 同じ手術でも病院によって入院期間の差が大きい。入院期間を延長して経営費用を捻出している医療機関も多いので、事前に入院期間を問い合わせておくことも得策だ。

「入院期間が延びたからといって、その分、私たちが健康になるわけではないというデータもあります」

 医療側の経済的利益の追求。そして、「念のため」「万が一のため」と不必要に検査を重ねる過剰診断や過剰治療。それらが積み重なって、日本にムダな医療がはびこるようになってしまったのだ。本当に必要なのかという視点を持った患者となり、余計なお金をむしり取られないようにしたい。