良かれと選んだ家族葬が悲しみの上塗りに……
case 1/「家族葬など非常識」近隣住民が怒鳴り込み
「『本日は家族葬が執り行われています。一般の方はお入れできないんです』。そうお伝えしたのですが、『喪主を呼べ!』と、ものすごい剣幕で怒鳴られてしまい……」
安部さんが司会を担当した家族葬でのひとコマだ。式場に怒鳴り込んできたのは故人の近所に住む女性だった。
「ご遺族が『今日は近親者のみの式なので』と釈明しても聞く耳を持ってもらえない。お悔やみの言葉は一切なく、『お別れできないなんて非常識だ』とののしる。『私に恥をかかすの』などとこぼしていた言葉から、世間体を気にされていたと推測します」
安部さんらがその人を別室に案内してお茶を出し、話を聞いたことで気が静まり、なんとか穏便にすんだ。
「近しい人の葬儀に参列するのを当たり前の風習とする地域もあります。家族葬ではそれができないことをうすうすわかっていながら、ご近所の手前、行かずにはいられなかったのかもしれません」
case 2/お布施額が見合わず読経の手を抜かれ唖然
家族葬でも一般葬と同じく、僧侶にお布施を渡し、お経を読んでもらうのは変わらない。
「ただ家族葬の場合、費用を安く抑えたいご遺族が多いため、お布施の額も渋くなりがちです。そもそもお布施の金額に決まりはないため、問題はないんですけど……」
そう語る安部さんが立ち会った式で異変が起きた。
「通常、お坊さんの読経は30~40分程度続きます。にもかかわらず、その日はものすごい早口でお経が読まれ、なんと10分余りで終わってしまった。私もご遺族の方々も唖然とし、その瞬間は言葉が出なかったですね」
式終了後、遺族と珍妙な読経の話題に。
「ご遺族いわく、『お布施を少なくしたのが悪かったのかしら……』とこぼしておられました。『私の読経代は100万円』と口にするお坊さんもいます。
家族葬を一般葬より格下に見て、お布施も安いから、『この程度でいいだろう』と手を抜かれるケースはなきにしもあらずです」
(取材・文/百瀬康司)