喫煙所をチェーン店にするのもアイデアの1つ

 改正健康増進法が全面施行から3年近く経ち、喫煙所できる場所を規制することで、逆に受動喫煙の可能性が高まるケースも増えていると山路氏は語る。各地の分煙の取り組みを取材するなかで、現状では「これが正解だ」といえるケースはまだないが、今後も『シリーズ “STOP!受動喫煙”』を続けていきたいと語る。

「例えば、大阪市は閉鎖された箱型の喫煙施設をなるべく作りたいと言っているけど、予算と場所の問題があるし、さらに防犯などの面で24時間開けておくわけにいかないから誰かがカギを締めにいけないなど維持管理の問題も発生する。だから、閉鎖型は人通りの多い場所に設置して、人通りがそんなに無いような場所は開放型を検討するなどと、試行錯誤しているみたいです。

 また、喫煙所の数も問題になっていますよね。大阪の商店街組合に取材したところ、喫煙所の有り無しで人流が変わる可能性があるので、タバコが吸えなくなることが商売に与える影響は計り知れないと。

 今、大阪市が想定する喫煙所の数は120か所なんだけど、商店街が試算したところ360は必要だと。大阪市の考える数字の3倍必要であると。ただ、たくさん作るには、やっぱり予算が問題になる。

 このようにまだまだ課題はありますけど、きちんと分煙対策施設を作ることで、喫煙者と非喫煙者が共存できる社会の実現を、この万博で見せてほしいなと期待してます」

 山路氏は、けっして動画を投稿した地域だけに関心を持っているわけではない。全国各地で行われている分煙への取り組みについて調査を続けている。

もちろん他の地域でもいろいろな取り組みがありますよ。東京・錦糸町駅前には、葛飾北斎の『富嶽三十六景』のデザインを施した開放型の喫煙所があるんですけど、喫煙所というよりはなにかのオブジェやアートがあるようにしか見えませんよ。あれは景観を損なわず、いいなと。

 東京の京橋エリアでは、遊休地に官民一体で閉鎖型の喫煙所を作ったんですけど、運営費を捻出するために、喫煙所のなかで広告を流すアドビジョンみたいなものを設置する計画があるみたいです。

 今は事実上、行政に任せっきりという部分も無きにしもあらずですけど、僕は、民間企業が喫煙所そのものを商売にすればいいとも思うんですよね。入場料を取らないまでも、なかで飲み物が買えたりしたり、喫煙所をチェーン店にするのもアイデアの1つだと思います。

 このように様々な取り組みが行われていることを多くの人に気が付いてもらうためにも、情報として出していかないとね。伝わらないことは、ないものと一緒ですから。本当は大手新聞社や大手テレビ局なども扱ってくれればいいんだけど(笑)」

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お話しを伺ったのは……山路 徹(やまじ・とおる)●1961年9月23日生まれ、東京都出身。1980年代から、『ニュースステーション』(テレビ朝日)の制作に関わる。1992年に「株式会社APF通信社」を設立。戦争・紛争地帯の取材を行い、様々な報道・ニュース番組に取材映像とレポートを提供してきた。