ノルウェーを出てアメリカで新しい事業を
それでもマッタ・ルイーセ王女はベレット氏への恋心を燃やし続け、昨年6月には婚約を発表した。
「ベレット氏への不信感を高める報道が相次ぎました。例えば、“これを持っていればコロナにかからない”と、3万3000円もするメダルを売りつけたり、瞑想やヨガなどの非科学的な代替医療を行ったりしていると。“なぜ王女を止めないのか”と、批判の矛先は、王室全体にも向きました」
こうした状況を受けて、ノルウェー王室は'22年11月、次のような声明を出した。
「マッタ・ルイーセ王女は、自身の活動と王室との関係をより明確に分けることを望み、国王やほかの王室メンバーと協議のうえ、公務から引退することを決意しました」
王女は多くの団体のパトロン(総裁・会長)を務めていたが、すべて辞任し、ほかの王室メンバーへと引き継ぐことに。「王女」の称号はかろうじて維持したものの、SNSなどで商業を目的として使用することは禁じられた。
「王女とベレット氏は、アメリカに行って、事業を始めるそうです。国王夫妻としては、娘を事実上、王室メンバーから外すということに抵抗もあったでしょうが、国民と王室の関係性を守っていくためにはやむをえない選択でした。その後、ベレット氏が重い腎臓病を患っていることが判明。ふたりの前途は、いまのところ、はっきりしていません」(多賀さん)
王女は、自身のインスタグラムでも、公務から引退することを表明し、「大きな平穏をもたらすことを願います」と述べている。
破天荒なマッタ・ルイーセ王女が国内に広げた波紋は、しばらく収まりそうにない。
君塚直隆 関東学院大学国際文化学部教授。イギリス政治外交史などを専門とし、著書に『立憲君主制の現在─日本人は「象徴天皇」を維持できるか─』など
多賀幹子 ジャーナリスト。元・お茶の水女子大学講師。ニューヨークとロンドンに、合わせて10年以上在住し、教育、女性、英王室などをテーマに取材。『孤独は社会問題』ほか著書多数