自分の書きたい楽曲とファンが求める音楽
宇崎は、その当時から楽曲作りを本格的にやりたいと思っていた、と話す。
「作曲家としての仕事は、願ったり叶ったりですね。とんでもなく忙しかったけど、全然苦にならなかった。人に提供する曲を書いているのは楽しい。逆に自分のバンドの曲を書くのがいちばんツラかった。お客さんが求めているイメージにとらわれたくないんですよ。お客さんたちは『スモーキン・ブギ』や『カッコマン・ブギ』『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』みたいな不良っぽい、やさぐれた歌を求めている。それでファンになった。だからずっとやさぐれていてほしいわけですよ。
僕としてはもっと違うことがやりたいのにね。そうこうしていると『横浜銀蝿』とか『クールス』が出てきて、ファンたちはみんなそっちにいっちゃった(笑)。これは大ラッキーでしたね。もう何作ったっていいんだと」
『ダウン・タウン・ブギウギ・バンド』は、トータル8年半にわたって活動。宇崎はその後、’85年に『竜童組』を立ち上げた。’90年まで活動の後、冒頭にあるようなさまざまな場所でのコンサート、また俳優としても活躍を続ける。
4月14日、宇崎は、昨年に続いて『阿木燿子プロデュース 宇崎竜童コンサート~風のオマージュ2023~』というコンサートを行う。2部構成で1部では、阿木や宇崎に大きな影響を与えた、今は亡き人たちへのレクイエム(鎮魂歌)として、彼らに捧げた楽曲をショートエピソードを添えて歌い上げる。松田優作さん、根津甚八さん、原田芳雄さん、桑名正博さん……。ナレーションは阿木だ。
「2部は、みなさんがよく知っている曲から新しい曲、今の日本が置かれている状況のニュースみたいな歌も歌います。きっと楽しんでいただけると思いますよ」
取材・文/小泉カツミ