男性&女性アナそれぞれの退職事情の違い

 一般企業の退社時と同様に、古巣を離れるアナウンサーには「給与面や待遇など、職場環境への不満を抱えるケースもあるのではないか」と述べる佐々木氏は、アナウンサーの退社事情について「女性アナと男性アナでは異なる」と見解を示す。

「かつて、女性アナの頂点は報道番組のMCだといわれていた時代がありました。ですが、民放では『30歳定年説』というのが囁かれていて、30歳を過ぎるとMCどころかお呼びがかからなくなり、またアナウンス職以外の部署に異動になることもありました。それを機会にフリーとなるケースが多かったですね。

 ただ現在では、女性アナの場合、各局ともほぼ毎年採用しており飽和状態。しかも、夕方のTBSの帯情報番組『Nスタ』でキャスターを務めるホラン千秋さん(34)のように、フリーで活躍する元アナウンサー志望の人材も大勢いますし、局を離れてアナウンサーを続けるのは難しい。

 元TBSアナの田中みな実さん(36)みたいに女優へ転身する選択肢もありますし、SNSなど自己発信の手段もあるため、前出のテレビ東京の森アナのように、局を退社したあともアナウンサーを続ける理由がなくなってきているのかなと思います」(佐々木氏、以下同)

 かたや、男性アナの場合は、フリーに転身しても女性アナより選択肢の幅が狭まると佐々木氏。

「男性アナウンサーも飽和状態。元NHKアナでテレビ朝日の『報道ステーション』でキャスターを務める大越健介氏(61)のように活躍できるのは、そもそもごく一部です。

 家庭の大黒柱として給与や待遇をより考える立場の方もいるでしょうし、退社の裏では素直に『もっと稼げる場所へ行きたい』という希望もあると思います。アナウンサーたちも1人の“会社員”として、同様の悩みを抱えているということなのでしょう。なので、昨今では、アナウンサーから転身して他業種へ転職するケースも目立ってきているのだと思います」

 最近では、元・TBSの国山ハセン氏(32)が、ビジネス映像メディアを手がける企業・PIVOTの映像プロデューサーへ転身。『報道ステーション』のメインキャスターを務めた元・テレビ朝日の富川悠太氏(46)が自動車メーカーのトヨタへ転職、元・日本テレビの桝太一氏(41)が退社後に同志社大学で助教になったことも話題を集めた。表舞台に別れを告げて、違う世界でのキャリアアップを図る。そういったケースも増えてくるのかもしれない。