ヘルメット着用が生死の境目に
そもそもヘルメット着用の機運はなぜ高まったのか?
「交通事故の発生件数自体は年々減少しています。ところが、すべての交通事故の中で自転車事故が占める割合は年々増え続けていて、その社会問題が今回の法改正につながったと考えられます」
ヘルメット着用の必要性を示すデータもある。
「警察庁のデータで、自転車事故時にヘルメットを着用していた人に比べて、未着用の人は致死率が約2.2倍、高くなることが示されました。
また、死亡者の損傷部位を調べたデータでは、約6割が頭部の損傷で亡くなっていることも判明。ヘルメットを着用すれば絶対に大丈夫というわけではありませんが、頭部を守ることで致死率を下げ、事故後も社会復帰できる可能性を高めることができます」
実際にヘルメットに命を救われた顧客からお礼のメールが届くこともあるそう。
「お子さんが信号のない横断歩道を自転車で通過中、速度オーバーで突っ込んできた車と接触。10m近くはね飛ばされたそうです。
しかし、ヘルメットを着用していたおかげで、全身打撲の大ケガを負ったものの、命に別条はなかったとのこと。ヘルメットには多数のひび割れが入っていたそうで、いかに衝撃が大きかったかがよくわかります」
もしヘルメットを着用していなかったら……。想像するだけでゾッとする。このようなケースを耳にすると、ヘルメットは必須に思えるが、実際の着用には課題もあるそう。
「お客様からは『降車後のヘルメットの取り扱いが面倒』という声をいただいています。盗難の可能性を考えると自転車に置いてはおけない。かといって持ち歩くにはかさばって重い。
これらの課題をクリアしないと、幅広い人にヘルメットを着用していただくのは難しいのでは、と個人的には考えています」
環境が整わないと着用率は上がりにくい。考えられる解決策は?
「スポーツサイクル利用者など現状ですでにヘルメットを着用している人は、ヘルメット収納場所があるリュックサックを活用したり、リュックサックの外側にひっかけたりして持ち歩かれています」