毎日“ハコバン”としてディスコで歌えることに

 横須賀の軍用娯楽施設、CLUB ALLIANCEは相変わらずお気に入りの遊び場で、仲間と繰り出しては踊り続けた。そんななかシンシアにひとつの転機が訪れる。

「ある晩、特別なパーティーがあり、いつものようにディスコ仲間のフミコと一緒に遊びに行ったら、とんでもなくステキなバンドが演奏していた。踊るのも忘れて夢中になって聴いていました。

 その演奏終わりのことです。フミコが『アンタ歌やりたいんでしょ、紹介してもらいなよ!』と言って、バンマス(バンドマスター)の奥さんを引っ張ってきた。奥さんは親切にも「旦那に伝えておくね」と、初対面の私に言ってくれました。ちょうど新しいボーカルを探しているところだったようです。話はバンマスに伝わり、さっそくオーディションをしてもらえることになりました」

 オーディション場所に指定されたのは、横浜のディスコ『LA MOON』。開店前の店を訪れ、バンドメンバーの演奏で歌った。

「3曲用意してオーディションに臨みました。まず歌ったのは『Wishing On A Star』。ローズ・ロイスのスローソングです。続けて3曲歌い、終わった途端『オッケー、じゃあ何日の何時からだから』と、その場で“ハコバン”というディスコで何か月か毎日歌う契約が決まった。

 歌の仕事が決まったものの、持ち歌もなく、歌えるのはオーディション用に練習していた3曲だけ。けれどプロとしてステージに立つとなると、歌で一晩もたせる必要がある。帰り際、バンマスからディスコソングのトップ40のリストを渡され『当日までにこれを覚えてこい』と言われました。

 最初は緊張もしていたけれど、それ以上にトントン拍子に話が進み、そのうち歌を覚えることにまっしぐらで取り組むようになりました」(次回に続く)

<取材・文/小野寺悦子>