「段取りなんていらない」
「庵野氏いわく≪仮面ライダーの基本はアクション≫。アクション監督を務めるキャリア20年の田渕景也氏は、庵野氏が理想とするアクションシーンを作るために、さまざまなプランを提案していくのですが、なかなか『OK』が出ない状況が続きました。
≪圧倒的に創意工夫が足りない≫
≪足りないのは意外性、今のところ一切ない≫
≪頭の中が殺陣でいっぱいになってる≫
≪やっぱり組み手は組み手にしか見えない≫
など、庵野氏の強烈なダメ出しからは、段取りを徹底的に排除したいという思いが伝わってくるものの、段取りなくしてはアクションシーンが撮れないのでは……という疑問がわいてきます」(エンタメ誌記者)
加えて庵野氏は、ダメ出しを連発する一方、明確な指示を出さないため、田渕氏をはじめ現場のスタッフは大混乱に。主演の池松は、≪誰も答えが見えてない状況で新しいことをやろうとしている≫と困惑しており、「あるアクションシーンで、庵野氏から『OK』が出たにもかかわらず、≪どうせやり直しでしょ?≫とやけくそ気味につぶやく彼の姿は、多くの視聴者に衝撃を与えたのでは」(同・前)という。
現場の混乱を尻目に、アクション部や役者部に対し、
≪殺陣ではなくて殺し合いを演じてもらえれば≫
≪「技を決めよう」という意識ではなく「相手を殺そう」という意識≫
といった指示を繰り返す庵野氏。同作のクライマックスである、仮面ライダー1号、2号と森山未來演じる仮面ライダー第0号・チョウオーグの闘いの撮影現場では、ついに田渕氏をはじめとするスタッフ陣に声を荒げ、激怒したのだった。
「アクションシーンの流れを確認した庵野氏は、
≪もう全部アドリブでやってほしいくらい≫
≪段取りなんていらないですよ≫
≪(ライダーたちに)一生懸命さが全然見えない≫
≪ただの段取りです≫
とイライラをあらわにしてその場を後にし、現場の空気は最悪に。その後、このシーンのアクションは俳優3人が考えることになり、これでは田渕氏の面目が丸潰れなのでは……とハラハラしてしまいました。
実際、田渕氏も≪もう俺は何もしないぞと思って、僕らの仲間も台本捨てて帰ろうって≫というところまで追いつめられていたそうですが、結局、庵野氏が、直立不動で涙ぐみながら謝罪。シーン中盤まではきっちり殺陣を作ろうと言い出し、田渕氏はそれを受け入れたんです」(同・前)