秘策7『「特老厚」のもらい忘れを必ずチェック』
「手続きを忘れずに」と菅野さんが念を押すのが、「特別支給の老齢厚生年金(特老厚生年金)」だ。65歳前に老齢厚生年金を受給できる制度で、'86年に年金支給開始年齢を60歳から65歳に引き上げたことから設けられた移行措置だ。
対象となるのは男性の場合は昭和36年(1961年)4月1日以前、女性の場合は昭和41年(1966年)4月1日以前に生まれた人。なおかつ国民年金加入期間が10年以上、厚生年金加入期間が1年以上あれば受給できる。支給開始の年齢は誕生日により違い、例えば1962年4月2日~1964年4月1日生まれの女性は、支給開始は63歳。
「勘違いされがちですが、この『特老厚』は、老齢厚生年金の繰り下げとは別物。支給開始とともに申し込んでも目減りしません。64歳が支給開始年齢なのに、『その年齢でもらったら損をする』と思い込んで手続きが遅れる人もいるので注意を」
この「特老厚」は特別な案内がなく、見落としてしまうケースがある。また、老齢厚生年金の受給開始年齢に達したときは別途手続きが必要。
【確認すべきはこんな人!】
□1961年4月1日以前生まれの男性
□1966年4月1日以前生まれの女性
□国民年金加入期間が10年以上ある
□厚生年金加入期間が1年以上ある
秘策8『増加中!?事実婚ももらえる!遺族年金をチェック』
平均寿命からも明らかなように、夫に先立たれる妻は多い。そこで気になるのが遺族年金だ。
「遺族年金は、夫が受け取るはずだった老齢厚生年金の4分の3が支給されます。ただ、これは自分の年金とダブルで受給できるわけではありません。
計算式が少し複雑なのですが、例えば夫が16万円、妻が8万円の年金を受給している場合、16×3/4=12万円が基準となります。妻の年金8万円に遺族年金4万円が足され、受け取れるのは12万円。実際の支給額の少なさにショックを受ける人も多い」と菅野さんは話す。
近年増えているのが、熟年離婚を経て再婚を決めたが、遺産でもめることを避けるため、事実婚としているケースの遺族年金のもらい忘れだ。
「事実婚でも夫婦であることを証明できれば、支給されます。諦めずに手続きを」
夫婦として認められるのはある程度の同居期間があること。また、役所に届ければ、住民票の続柄を「未届の夫・妻」と記載してもらえる。いざというときに備え、事実婚でも届け出をし、パートナーの死後は申請を。
「しかし、この場合でも計算式は先ほどと同じで、自分の年金に加算されるわけではありませんので注意を」
遺族年金はもちろん助けにはなるが、丸々増えるわけではない。やはり自分の年金の増額や、老後資金の準備が重要なのだ。
【確認すべきはこんな人!】
□夫より年金受給額が少ない
□亡くなった事実婚の夫がいる
□居住を共にしていた恋人が亡くなった
「長く働き、長く生きた人が得するのが年金。必要な手続きを確認しつつ、健康で病気をしないのがいちばんの秘策でもあります」(菅野さん)
(取材・文/仲川僚子)