すぐにでも再婚したいのに立ちはだかる100日の壁

「仕事がらみのイベントで出会った57歳の男性でした。彼も離婚経験者で、15歳になる男の子を育てていました。何度か食事をしているうちに、恋愛関係になりました。出会ったときに、『私には別居している夫がいる』ことを伝えていましが、それでも、『結婚を前提に真剣に付き合ってほしい』と言ってくださったんです。私も、穏やかで気取らない彼の人柄に触れているうちに、“残りの人生をこの人と一緒に過ごしたい”と思うようになりました」

  “この男性を逃したら後悔する”と思ったえみこさんは、離婚に向けての行動を起こします。

「揉めたくなかったので、弁護士を立てました。財産分与も慰謝料も年金分割も全て放棄。籍だけ抜いてほしいという条件でした。別居も1年を過ぎていましたし、お金の要求もなかったからか、元夫はあっさりと離婚を承諾しました」

 離婚届を出したのが3月28日。そこから、1日も早く再婚したかったのですが、そこで立ちはだかったのが、再婚禁止期間でした。

 ただ調べてみると、令和4年12月10日に再婚禁止期間が廃止される法案が、国会で成立したことがわかりました。ところが施行は令和6年4月1日なので、現時点では100日を待たないと、再婚ができませんでした。

 そもそもなぜ女性にだけ再婚禁止期間が設けられているのか? 

 それは、もし女性が妊娠をしていて出産をしたときの父親問題です。民法で、『離婚から300日以内に出産した子どもは、離婚前の夫の子と推定される』と定められているのです。

 女性が離婚した翌日に妊娠したら、その子どもが新しい夫との間にできた子でも、300日以内に生まれてしまうので、法律上では元夫の子になってしまう。

 では、なぜ再婚禁止期間が廃止されたかといえば、現在は医学が発達し、DNA鑑定などでも親子の証明ができる。また妊娠しているかどうかも、検査の精度が上がったためにかなりの初期段階で判定が可能になったからだそうです。

 とはいえ、施工されるのは令和6年の4月1日ですから、現時点でえみこさんは100日待たないといけません。

「ただネットで調べたら100日以内に入籍できる抜け道もあったんですね」

 その抜け道とは、この7つでした。

1. 離婚したときに妊娠していなかったことがわかる証拠がある場合 2. 離婚前から妊娠していて、離婚後に出産した場合(ただこの場合は、再婚していても、子どもは前夫の子どもとなる) 3. 離婚した前の夫と再婚する場合 4. 高齢で、妊娠の可能性がない場合 5. 夫が失踪宣言を受けた場合 6. 夫の生死が3年以上不明で裁判離婚した場合 7. 離婚後に避妊手術を受け、妊娠不能の意志の診断書を添えて届出した場合

 えみこさんは、59歳、すでに閉経していたので妊娠する可能性はゼロ。4番に該当すると思ったのです。そこで、念のために役所の戸籍担当課に電話に問い合わせをしてみました。

「そうしたら、『高齢の定義は、65歳から』だと言うじゃありませんか! となると、1番の“離婚したときに妊娠していないことを証明する”しかありませんでした」

 またもネットで検索し、妊娠していないことを証明する診断書(不懐胎証明書)を産婦人科で出してもらえば良いことがわかりました。

「そこからはもう、笑い話のような展開でしたよ」