最近のBLドラマぶっ飛んだ設定が多い理由
そんなふうに市民権を得ていったBLドラマだが、最近の作品は設定に“やりすぎ感”や“なんだこれ感”が……。今期でいうなら、
「『私と夫と夫の彼氏』(テレビ東京)はセックスレスの夫婦に夫の彼氏が絡むBLドラマ。設定半分でも成り立ちそうです(笑)。『全ラ飯』(カンテレ)は“裸で食事をする”という癖がバレたことで展開するBLもの。なんというか、よくわかりません(笑)」
1月期でいうなら『僕らのミクロな終末』(ABC)は10日後に地球が滅亡するという中、“楽に死ねる薬”の代わりに死体の処理の手伝うことで心と身体の距離を縮めて……というBL。
「設定としては“ごった煮”感がありますね。原作漫画にはコミカル要素もあるんですが、ドラマはもっとシリアスに描きながら性描写もしっかり。SF+BLといった感じです。同じく1月期の『ジャックフロスト』(MBS)は記憶喪失+BLですが、泣ける。また昨年放送された『永遠の昨日』(MBS)はゾンビ+BLですが名作で、完全版が4月から放送されているほどです」
田幸さんは、確かにぶっ飛んだ設定が多いと語る。
「質がすごく高い作品もあれば、単純に役者さんのお顔を楽しむだけのものも。近年、多くの人が動画配信を楽しむようになり、長いコンテンツとしっかり向き合えない傾向が。実際、BLではないドラマでも30分や40分の枠が増えています。
飽きやすい人にも見続けてもらうために、要素を盛る傾向はBLに限らず、ドラマ全般にあるように思います。また、これだけBLドラマが量産されているので、あれもこれも乗っけることで差別化を図っている部分もあるでしょうね」
また制作サイドから見てみると“BLなら企画が通る”という傾向も。
「BLだったら放送後の配信でもある程度見てもらえることを説得材料に、やってみたいことにチャレンジしているんだと思います」
実際、BLドラマには映像がすごくきれいなものが多いという。
「例えば『永遠の昨日』、そして『ジャックフロスト』も当てはまりますね。クリエイターたちもBLを笠にして攻めた映像を作れているんだと感じます」