憧れだった浅草の舞台に立つ
最先端のメディアで活動を始めた一方で、老舗の寄席・浅草演芸ホールの舞台にも、芸人として立つようになった。
「浅草の舞台に立つのは憧れでしたから、うれしいですね。やっぱり生はいいですよ。クラスの人気者からスタートした私にとって、原点に戻った感じ。緊張はしますけど、目の前のお客さんに、ドカーンとウケたときは、この仕事をやってて良かったぁという快感がありますね」
逆にウケないこともあるのが、生の怖さでもある。
「スベったときは、ぞぞぞっとして死んでしまいたいというぐらい落ち込みますね。ヤジを飛ばされたこともありますよ。そのときは、おもちゃのバズーカで撃ったらウケました。演芸場は儲けを出演者で分けたものがギャラになるので、1ステージ600円ってこともざらにある。すると、小道具代のほうが高い!(笑)
でもギャラじゃないんですよ。そりゃたくさんもらったらうれしいですけど、板の上でネタをやることに意味がある。だから、出られる限りは舞台に出たいんです」
ボランティアや趣味など、多方面で活動しつつも、
「自分の職業はお笑い。それだけはやめたくない」
と言い切る。42年のお笑い人生において、女性ならではの苦労はなかったのだろうか。
「苦労? ないなぁ。ただ、男だったらなぁと感じたことはありますよ。それはずーっとある。男同士だったら、たけしさんとも仲良くなれたのかなぁって思う。私がもっと面白かったら、女でも相手してくれたのかもしれないですけど。そもそもレベルが違うんで。うんと先を走ってるたけしさんに追いつきたいと頑張ってきたけど、追いつけないですね」
男同士のほうが面白いことができるということだろうか。
「そんなことないと思いますよ。ただ、『オレたちひょうきん族』のころに共演してたのは昭和の芸人さんだから、仕事が終わるとみんなでエッチなお店に行っちゃったりする。そんなとき、私はぽつーんとなります。(島田)紳助さんが『邦子も一緒に行けばいい』ってキャバクラ連れていかれたことはありますけど(笑)。やっぱりそんなに楽しくはなかったですね」
最近は女性芸人も増え、状況も変わりつつある。
「いい時代になったなぁと思います。私は若い子たちとの共演の機会はあまりないんですけど。一度、清水ミチコちゃんが10人ぐらいの若い女性芸人たちと歩いているところに、たまたま出くわしたことがあって。帰るところだったらしいけど『一緒にもう一軒行こう!』って、みんなでカラオケ行ったんです。
女性芸人だけで遊びに行けるなんて、すごく楽しかった。そこでだんだん質問大会になっちゃって、『つらいときはどうしたらいいですか?』とか、『恋愛はどうしてましたか?』とか」
男性芸人は面白ければモテるのに、女性芸人は敬遠されると嘆く話がトーク番組などでされることも多い。
「でも女性芸人って、今モテモテみたいですよ。ルックスに関係なく、コミュニケーション能力が高いというか、人に気を使えるから。モテない子は、女優さんでも顔のブスじゃなくて、心のブス」
最近は容姿いじりをタブー視され、ブス扱いされることも少なくなったかわりにネタにもしにくい状況になった。
「ブスってひとつの個性だし、大事なキャラクターです。だから、ネタでブスを禁じられると本人もやりにくいと思うんですよね。きれいな人は年をとるとツラそうだけど、ブスはずっと稼げる。これからの女性芸人にも、ブスと言われても、それが武器だと思ってたくましく生きていってほしいと思いますね」