生活と創作が一体化、自転車でアトリエに

 取材時も新しい作品に取りかかっていた横尾さん。今のルーティンは?

「かつては生活と創作を切り離していたんですが、今は生活そのものが創作と一体化してしまいました。だから朝起きたらすぐアトリエに来ます。描かない日もね、いつでも描ける状態で、絵の環境の中に自分を置いとかなきゃ。ただね、アスリートはね、練習したりいろいろするでしょう。僕は練習するのが嫌いなんですよ。いきなり本番ですよ(笑)。そのほうがエネルギーが集中します。練習していると頭の思考がどうしても勝ってしまいますから」

 6時ごろに起きて朝食の後8〜9時に自宅からアトリエまで自転車で通い、暗くなったら帰る生活を繰り返している。絵を描く日もあれば、何もしないで過ごす日も多いという。

「毎日は非常に単純です。ときどきここのソファに寝転がって、だらしない格好でエッセイを書くくらいで。まあ何もしないことが圧倒的に多いですけれども、“何もしない”ということをしてるっていうのか、絵を描くときに『考えない』っていうことが僕にとってすごく重要なんですよね。

 いかに考えないかっていうことの訓練をしてると思います。今は考えないことが僕にとっての健康であったり、仕事なのかなと思っていますね。だから何もしない時間が重要なんです」

 友人との交流は今もあるのだろうか?

「みんないなくなっていく。友人知人がね、本当に死んじゃって、もうほとんど親しい人は残っていない。

 でも、3歳年上のオノ・ヨーコさん(90)はね、まだ頑張って生きてるかな。行動力が今もすごくて、この前、電話がかかってきたんですよ。『横尾さん、ニューヨーク来ない?』って言うから、とんでもない! 体調がよくないからヨーコさんが来たら、って返事をした。

 一週間ぐらいしたらまた電話がかかってきて『今、東京にいるわよ。あなた来いって言ったじゃない』って、びっくりしますよね。コンビニに行くみたいにニューヨークから僕のところに来る」