目次
Page 1
ー 介護を焦るよりまずは親を観察
Page 2
ー 周りを巻き込み共倒れを防ぐ
Page 3
ー 頼りにすべきは地域包括支援センター
Page 4
ー 介護サービス開始までもうひと頑張り ー 老親が「何かおかしい…」と感じたら最初にすべき3ステップ

 

 親にはいつまでも元気でいてほしいが、そうはいかないのが現実。しかも、離れて暮らしているとなれば、帰るたびに増す老いに心配を募らせる人も多いだろう。

 先々の「介護」を覚悟していても、どう備えたらいいのかわからない、というのが現状ではないだろうか。

介護を焦るよりまずは親を観察

 介護に詳しいあおぞらコンサルティングの池田直子さんに話を伺うと、介護の始まりは、大きく分けると3つのパターンがあるという。

「まず、(1)突然、ケガや病気で日常生活が送れなくなるパターン。そして(2)環境の変化や心理的ショックがきっかけで認知機能や体力が衰えるパターン。

(3)加齢により少しずつ認知機能が衰え、身のまわりのことやお金の管理などが危うくなり、部分的に手助けが必要になるパターン。

 突然のケガや病気は介護のスタートがわかりやすいですが、ゆるやかな認知機能や運動能力の衰えはなかなか周囲は気づかないもの。親と離れて暮らしている場合は知らぬ間に状態が悪化していたなんてこともあり得ます。

 帰るたびに家の中の様子や親の言動をよく観察し、変化を見逃さないことが大切です」(池田さん、以下同)

 また、介護する側と介護される側では、介護の捉え方や価値観に開きがある場合も多く、これがスムーズな介護の妨げになることも少なくない。

「子どもの側は『もうそろそろ』と思っていても、親の側は『まだ大丈夫』の一点張り、というのはよくある話。

 本当なら、介護が必要になる前から本人の希望などを聞いておけるといいのですが、元気なときは『介護なんてまだ先のこと』といって話を聞いてくれず、微妙な時期になると、介護の話題を嫌う傾向があります」

 こちらが心配して介護を焦ると、親がかえって頑なになるなど、親子関係に亀裂が入ってしまうこともある。とはいえ、話し合いなどを避けているうちにあっという間に認知症が進んでしまう場合もあり、介護する側の対応が遅れて取り返しがつかなくなることも。

 ある男性のケースでは、認知症の進行が早く、家族が判断を迷っているうちにどんどん症状が進行し、半年後には印鑑や通帳がどこにあるのか聞き出すこともできなくなったという。

「親の様子を見守りながら、情報収集も粛々と進めておきましょう。親の資産や希望する介護の形を聞くことができればベストですが、たとえそれが無理でも、かかりつけ医に連絡をとって身体の状態や治療の経過を把握しておくくらいはできるはずです」

 帰省の回数を増やしたり、ひんぱんに電話するなど、コミュニケーションの機会を増やしていけば、親の様子が把握しやすくなり、自然な形で深い話に誘導も。

 親が意地を張らず本音を漏らしてくれるようになればしめたもので、必要な情報も集めやすくなる。とにかく初動が肝心。素早く、的確に、がポイントだ。