周りを巻き込み共倒れを防ぐ

 来たるべき介護のXデーに備えて、介護する側の態勢も整えておきたい。

「どうしても介護される側にばかり目がいきますが、自分たちの周りを整えることも大事。兄弟姉妹の誰が介護できるのか、どのくらいできるのかなど、介護が始まる前から親の状況を共有し、役割分担して備えましょう」

 避けたいのは、ひとりに負担が集中すること。介護は子育てと違い、時間がたてばたつほど大変になることが多い。最初はひとりでこなせても、やがて疲れ果てて、心身を病むことも少なくないのだ。

 それぞれの生活があるうえ、家が遠いなど、関わる人すべてが同等に役割を担うことは難しい場合がほとんど。

 そのときは「資金支援」や「親の話し相手」、事業者との調整などの「間接的支援」に回ってもらい、どんな形でも介護に参加してもらうのがベター。家族全体で乗り切る態勢を整えたい。

75歳以上の3人に1人が要支援・要介護! 出典:令和4年3月分介護保険事業状況報告(暫定)〜厚生労働省より
75歳以上の3人に1人が要支援・要介護! 出典:令和4年3月分介護保険事業状況報告(暫定)〜厚生労働省より
【写真】75歳以上の3人に1人が要支援・要介護、現状が一目でわかるグラフ

 さらに、遠距離介護は、サポートの輪が広がれば広がるほど心強い。親の近くに住んでいるおじ、おば、姪、甥、そして近隣の人。幅広く声をかけてみると、思わぬサポーターが現れることもある。

 近所の人に「何かあったらお願いします」と声をかけ、連絡先を交換しておくだけでも、いざというときには心強いものだ。

 また、介護を理由にした離職はできるだけ避けてほしい、と池田さんは言う。

「仕事をしながら介護をするのはたしかに大変ですが、介護離職した人の負担感を調べてみると、経済面ではもちろん、精神面や肉体面での負担も増したと感じている人が多いのです。

 介護だけの生活は孤独で、経済的な不安などから介護サービスを使わず自ら介護をすると、精神的にも肉体的にも負担が増して親子ともども共倒れの可能性が。また、離職してしまうと今度は自分の老後資金が危うくなる場合もあります」

 介護が終わったらまた働くといっても、高齢になってからの再就職はなかなか厳しい。働き方を工夫し、介護サービスをめいっぱい使いながら、介護と仕事を両立させる道を検討してほしいという。

 仕事を辞めない介護を実行するためにも、介護の態勢作りはもちろん、勤務先で使える介護支援制度がないかの確認なども忘れずに。