実は脱水なんて無縁と思っている人こそ、「隠れ脱水」による突然死にあいやすい。炎天下には出かけないし、エアコンを効かせた涼しい部屋にいれば人ごとだと聞き流してしまう人も多いだろう。ところが、
「扇風機やエアコンの風に当たっていると気づきにくいのですが、乾燥した空気や風が汗を蒸発させてしまい、自覚がないまま、かなり脱水症状が進んでいるというケースもあるのです」
夏の突然死は「無自覚」や「過信」の部分も多い
例えばこうした状態でお風呂に入ってしまうと、突然死の危険性は一気に高まる。もともと血栓ができやすくなっていた血管に、冬場も血圧の乱高下を招いてきた「寒暖差」がさらなる追い打ちをかけるからだ。
急激な温度変化が夏場にも起こる、といわれても、なかなか理解できないかもしれないが、寒暖差にさらされる状況は、意外と身近に潜んでいる。熱いお風呂と冷水のシャワーの併用や、冷え切った部屋から高温多湿の浴室への移動などで、ほとんど自覚はなくても血圧は急変動している。
気づかないまま起こっている脱水や急激な温度の変化。ここまで説明してきたように、夏の突然死は「無自覚」や「過信」によって引き起こされている部分も多い。もともと突然死は、健康に自信がある人、例えば若いころと変わらないと頑張る男性のほうが、リスクが高まるといわれてきた。
もちろん、健康に懸念がある人は当然だが、一般的には健康そうに見える痩せ型も実は危ない。「痩せぎみの高齢者は脱水症状になりやすいから」と秋津先生。「動脈硬化が進んでいる人と危険度は変わりません」という話もある。
突然死につながりやすい動脈硬化リスクの要素を挙げるなら、年齢(50代以上)・遺伝といった属性、たばこ・お酒・ストレスといった生活習慣、それらが招く高脂血症・高血圧・糖尿病といった生活習慣病、痩せすぎ(脱水症状)に太りすぎ(血管に負担)と、ほとんどの人が当てはまりそうな項目が並ぶ。
「遺伝や年齢などは、防ぎようのない条件に思えるかもしれませんが、突然死の可能性がなきにしもあらずと自覚することで、対策も重ねていけるのです」
もちろん心筋梗塞や脳梗塞の前兆として見られることもある「狭心症」や「一過性脳虚血発作(TIA)」が起こった人も、突然死へのカウントダウンが始まっている証拠だと強く警戒を促す。
「狭心症」には手のひらで示せるような広い範囲にわたる胸の重苦しさが、「TIA」には目の前の暗い感じや手のしびれ、手を振ったときの違和感などが生じる。