菊池あずは受刑者(本人のFACEBOOKより)
菊池あずは受刑者(本人のFACEBOOKより)
【写真】美しすぎる殺人者がSNSにアップしていた自撮り

「体内の女性ホルモンが欠乏することで、更年期障害のような症状を引き起こすようです。精神的に不安定になったり、骨粗しょう症といった身体症状が出る可能性も。刑事裁判では、精神鑑定をした鑑定医が“菊池受刑者は女性ホルモン欠乏症の状態にあるため、女性ホルモンの投与が必要である”と証言していました」(同・司法担当記者、以下同)

違法ではないと請求を棄却

 菊池受刑者は、刑事収容施設法56条で《社会一般の医療の水準に照らし適切な医療上の措置を講ずるものとする》と定められており、精巣も卵巣もなく体内のホルモンが欠乏した状態であるため治療が必要な状態だと主張。

 これに対して国側は、拘禁当初の精神的に不安定な状態から回復しており、ホルモン剤を服用していなかったことが原因ではない。ホルモン剤の処方を望むのは、女性としての外見を保つ美容目的だと反論していた。

 そして、2019年4月に言い渡された判決は、菊池受刑者の訴えを退けるものだった。

「判決では、菊池受刑者が精神的に不安定な状態に陥ったのは、拘置所や刑務所に拘禁されたことによるストレスが原因とされました。2016年9月以降、菊池受刑者の精神状態は“今はとても安定している”と話せるまでに回復し、骨密度の測定をしても問題はなく、身体的な症状もでていなかった。

 そのため、直ちに身体・精神に重大な影響を与えるとは認められず、ホルモン治療を行う特段の必要はなかったと判断した。そのため、刑事施設がホルモン剤を処方しなかったことは違法ではないと請求を棄却したのです

 治療費は国費によって賄われており、希望するすべての治療が提供されるわけではないことも裁判で指摘された。

 菊池受刑者は1審判決を不服として控訴をしたが、手続きに必要な手数料を納付しなかったため、控訴は却下。2019年11月に判決は確定した。

 あれから4年――。LGBT法が施行され、性的少数者をめぐる環境は劇的に変化しつつある。

 菊池受刑者の裁判でも証言台に立った、産婦人科医で岡山大学医学部保健学科の中塚幹也教授に当時の判決について話を聞いた。

菊池受刑者に出た身体的・精神的な症状が、拘禁されたことによる影響だとする判決は、医学的な見地からすると間違ったものだと考えています。菊池さんは精巣も手術で摘出していますし、当然、卵巣もない。

 さらに長年飲んでいたホルモン剤の服用も突然やめたわけですから、体内にまったくホルモンがない状態であるため、ほぼ確実に更年期症状がでる。これは産婦人科医なら常識です。さらに彼女に現れていた症状のほとんどが、ホルモン欠乏による更年期症状だと説明がつきます」

 裁判では精巣や卵巣以外からもホルモンは分泌されるとの指摘もあったが?

脂肪細胞などから多少は女性ホルモンが分泌されますが、それではまったく足りない。だからこそ、更年期の女性が非常に苦しんでいるわけです