だが、今は違うと話す。
個性豊かなプレーヤーが増加
「25年前は、私しかいなかった。ですが、今は車いすギャルのさしみちゃんをはじめ……まだ会ったことがないので会ってみたいのですが(笑)、個性豊かなプレーヤーが多い。
自分のライフスタイルを発信する子もいれば、トラベラーとして世界中を旅している人など面白い若手がたくさんいる。自分たちの個性を、YouTubeなどで積極的に発信している姿を見るといいなぁって」
ずっと相談できる相手がいなかった乙武さんは、いつしか相談される存在になった。
「47歳にもなって使う言葉ではないですが、兄貴分的な感じで慕ってくれて、いろいろと相談してくれるんです。彼らの相談に耳を傾け、何かしら役に立てていると思えると、苦労してきてよかったなって報われるんですね。
今、若い子たちの糧になっているならあのときの経験も悪くなかったなって、ようやくここ数年で思えるようになりました。50年後、同じ境遇の人たちから、『なんか乙武っておっさんがいたから、自分たちはちょっと生きやすい社会になったらしい』、そう思われるようにもう少し頑張りたい」
手足はないが、その背中はとてつもなく大きい。電動車いすが通った25年間の轍は今、多くの若い世代の道しるべとなっている。
取材・文/我妻弘崇
おとたけ・ひろただ 1976年東京都生まれ。早稲田大学在学中に出版した『五体不満足』(講談社)が600万部のベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、小学校教諭などを歴任。現在は、執筆、講演活動のほか、インターネットテレビ「ABEMA」の報道番組『ABEMA Prime』の水曜MCとしても活躍中。