娘がデビューするも朝までバーで飲む自堕落な日々

「テレビでCMが流れると、たちまち“あれ誰が歌っているの?”と問い合わせが殺到するようになりました。

 レコード会社5社からスカウトの声がかかり、最終的にソニーミュージックと契約しています。11歳のときCMソングを歌い、12歳でデビューの準備を始め、デビューは13歳の7月に決まりました。デビュー曲は『Eternal Memories』。もともと30秒だった『ビタミンウォーター』のコマーシャルソングをアレンジし、一曲に仕上げたものでした」

クリスタルのお披露目は新宿のパーク ハイアット 東京が会場で、音楽業界の人間やマスコミなど大勢の関係者が集まりました。娘は幼いころから人前で歌うのが大好きで、このときも楽しく歌っていたようです。

 ただ学校との両立は大変でした。レコーディングにプロモーション、コンサートもある。学校が終わると仕事にかけつけ、夜中に家へ帰ると宿題をして─と、寝る間もほとんどありません。

 娘は誰に似たのか、まじめでお勉強もできる優等生でした。私が『一日くらい休んでもいいよ?』と言っても、『絶対嫌!』と言って、休まず学校に通っていた。わが娘ながら、あれは見上げたものだなと思います」

 小学校は根岸住宅地区内の学校へ、中学に上がると横浜の自宅から横須賀にあるアメリカンスクールに通っている。

「スクールバスが迎えに来るのは朝6時。当時私は男のせいでお酒を覚えて、朝までバーで飲み続けるという自堕落な日々を過ごしていました。

 ベロベロに酔って店でつぶれ、はっと気づけばバスが来る時間が迫っている。大急ぎで家に帰り、『クリ、行くぞ!』と娘と手をつないでバス停まで走る、なんてこともしょっちゅうです。

 バス停に着くと黄色いスクールバスが目の前を走り去った後で、娘と一緒に猛ダッシュでバスの前に回り込み、強引に乗り込んだことも一度や二度ではありません。それはひとつの武勇伝になっているようです。

 後にクリスタルがテレビの企画で学校訪問をした際、バスの運転手さんに『クリちゃん、あのころよく走っていたよね!』と言われ、思わず苦笑いしました」(次回に続く)

<取材・文/小野寺悦子>