増え続けるセルフレジ万引き、防ぐ方法はあるのか。
お客様に積極的に対応することが有効
伊東さんは香川大学で心理学を専門とする大久保智生准教授と共同で、10年以上前から万引き防止の研究に取り組み、今年に入ってついに「セルフレジ不正使用防止マニュアル」を完成させた。2月には、そのマニュアルをもとに伊東さんも立ち会いながら、店舗で教育実践も行ったのだ。
「万引きは摘発に躍起になるより、万引きさせないことが何よりも大切。そのためには、店側がお客様に積極的に対応することが有効です。
『いらっしゃいませ』と挨拶をする、『なにかお困りですか』と声をかけるなど、ホスピタリティーをもって接するというだけで盗まれにくい環境がつくれ、犯罪防止につながるのです。そのうえ、店側の丁寧な接客でお客様の満足度も上がるというメリットもあるのです」
また、セルフレジ担当のスタッフは、セルフレジの周りに設置された防犯カメラの映像をリアルタイムで監視しているだけということも多いが、カメラを頼るのではなく、実際にすべてのセルフレジが見える場所に立つことをマニュアルではすすめている。
「お客様の目を見て声をかけ、自らの存在をアピールすることがポイント。教育されたスタッフが配置されるだけで、たちまち盗みにくくなるものです」
とはいえ、人手不足解消や人件費削減のためにセルフレジを導入している以上、万引き防止のために人数を割いたり、教育することに力を入れられない、という店側の本音もある。
「まさにジレンマですよね。ある大型スーパーでは、会社の決定で18台ものセルフレジを設置するように指示されましたが、店長が『絶対に万引きされる』と危機感を持って、設置を拒否したという話も聞いてます」
盗むつもりはなくても、たまたま読み取りができなかったり、周りに人がいなかったりすると、「このまま持ち帰ってもわからないかも」という気持ちがよぎるかもしれない。