レアなケースの切り取り。不安を煽っているだけ
「一般的などとはまったく言えません。本当にごくわずかのレアなケースの切り取りといえますし、“安置時間は平均1.7日”というデータがそれを示しています。ましてや“3割が最長6~8日待機”と煽っていますが、これは7割はそれ以下だったことを示している。
たしかに火葬場は局地的・局“時”的に混むことはあります。それは年末年始に亡くなられた場合に三が日を意識的に外して、その後にお葬式をすることによって一時的に混んでしまうケース。また、多くの死者が出てしまうような災害が起こったら、どの地域であろうが火葬場は混みます。そのような特別なケースで火葬場は混んでしまい、火葬待ちとなることはありますが、あくまで特別なものです。
災害についてコロナ、またそれに伴う医療崩壊も特例に入るでしょう。あれだけ大規模な疫病は災害と言えますから。火葬炉の1つをコロナ用に特別に取った火葬場もあり、それによってほかが圧迫され混んでしまったというケースもあります。少ない事例をさも全体で起きているように見せるのは、不安を煽っているだけで、現実に則しているとは言えません」
前出の厚労省が協力した火葬場へのアンケートでは、遺体の安置時間は平均1.7日とあった。
「だいたい2〜3日でお葬式はできます。またそのくらいの期間があったほうが、遺族の方も安心していろいろな準備ができます」
しかし、多数ではないとはいえ、6〜8日火葬待ちとなったケースはたしかに存在するようだ。もろもろの記事はその部分を強調しているのだろう。正月は当然年に1度であるし、災害もまれである。なぜ少ないながらも火葬待ちとなってしまう場合があるのか。その大きな理由は日本の現代社会が大きく関係している。
「老人ホームの増加が理由の1つです。東京都とその近郊を例にしますと、都内に親世代の高齢者が住んでいて、一方その子ども世代は都内の家は高いので近郊の埼玉県や神奈川県に家を買うという人は少なくない。自分の親が80代などになって、どこの老人ホームに入れるかとなった場合、家から近いところに入れる。入居費用も都内より安い。そうすると老人ホームのある地域は高齢者が増えるので、その地域は亡くなる方も当然増えます。人口動態で予測していた以上の死亡者数となってしまう。このような増加によって一部地域の火葬場が混んでしまったということがあります」