失ったものを数えず、得たものに目を向ける
「年を取ると当然できなくなること、手放さなくてはならないものが増えていきます。私はできなくなったこと、手放すことを嘆くのではなく、今できることと、今あるものを大切にしていきたいと思っています」
出産はできないが、わが子の成長を見るという楽しみまで失ったわけではない。わが子の将来を見るという豊かな楽しみに目を向けたいと語る。
「母は80歳なんですが、よく“こんなこともできなくなった。情けない”と口にするんです。私は“そんなことないよ、できることがまだまだたくさんあるじゃない”と言うんですが、これは年を重ねたからこそ言えるようになったんだと思います。なんでもできた若いころには、そんなふうにはものごとを見られませんでしたから」
年を重ねることは、成長を重ねることそのもの。小じわも増えるが、考え方の幅が広がり、人に優しくなれるようになる。そんな“老いるメリット”に考えが及ぶようになったそう。さらには“できなくなる”ということは失うというネガティブな変化ではない。むしろ無理や無駄を手放せるようになることだとも続ける。
「最近、若いころにはできなかった楽しみ方が増えたように思いますね。以前には流行や人の影響でいろいろなものに手を出しては飽きて投げ出すこともありましたが、次第に自分に本当に必要なものや楽しいことがわかるようになり、掘り下げていけるようになりました。エイジングって意外と悪くないですよ(笑)」
女子でなく、女史と言われる年齢になって初めてわかるものがある。閉経は、これまで積み上げてきたものを楽しむ時間が始まる号砲だと軽やかに笑った。
「経験や思い出、人への優しさなど得るものは、増えているように感じます。今を楽しむ姿勢で、50代以降の人生を輝かせていきたいですね」
渡辺満里奈 1970年11月18日生まれ、東京都出身。2児の母。'86年フジテレビ『夕やけニャンニャン』でデビュー。現在TBSテレビ『ひるおび』、ニッポン放送『MUSIC10』にレギュラー出演中。11月17日全国劇場公開の映画『OUT』にも出演決定。
取材・文/千羽ひとみ