今回被災地へ足を運ぶ予定がない理由
しかし今回、被災地へ足を運ばれる予定はない。
その理由について心理学に詳しい東京未来大学こども心理学部長の出口保行氏はこう解説する。
「今回、公務のため来臨される厚岸町から、被災地周辺までは300km以上離れています。そのため、被害地域を見舞うとなると、もう1泊する必要が生じます。そうした状況や雅子さまの体調を鑑み、葛藤の末、ストレスになりうる行動は避けるべきと判断したのではないでしょうか」
即位から4年が過ぎた今となっても、2泊3日以上の地方公務は高いハードルとして立ちはだかる。
「雅子さまは15年以上、2泊3日以上の国内公務をこなされていません。'04年に公表され、長期療養を継続されている適応障害が大きな原因だといわれています。泊まりがけの公務が可能となっただけでも回復の兆しといえますが、宿泊日数が増えるほど、やはりストレスは大きくなります。したがって、宿泊を伴う公務ではなるべくコンパクトな日程を組んでいるのでしょう」(出口氏)
『北海道胆振東部地震』で家が一部倒壊するなどの被害に遭ったという山内香さん(64)は、上皇ご夫妻がお見舞いのため厚真町を訪問されたときのことをこう振り返る。
「私は29年前の阪神・淡路大震災も経験していたので、お二方から“2回も大変でしたね”とお声をかけていただきました。お話ししている間、美智子さまは私の手を優しく握ってくださって……。感動で涙が止まりませんでした。震災に遭って心が参っていたので、おふたりが来てくださったことはとてもうれしかったですし、心が和らぎました」
“いつ来るかわからない地震に備えてほしい”との思いから、震災ガイドを務める山内さんは、雅子さまのご来訪は大きな意味があると話す。
「北海道胆振東部地震から5年がたって、復興の兆しが見えてきたとはいえ、心の傷はなかなか癒えるものではありません。私を含め、いまだにトラウマを抱える人は多くいます。たくさんのご苦労を抱えられてきた雅子さまがいらっしゃることで、多くの人が希望を見いだせると思います。今回でなくても、いつかいらしてほしいですね」
期待に応えるべく、2泊という高い壁を越えられる日は訪れるのだろうか─。